クリスタニア


“双牙伝説クリスタニア”



Preplay.


  GM   じゃあ、『クリスタニア』のセッションを始めます!
  一同   はーい!



 数人が同じテーブルに着き、紙や筆記具やダイス(サイコロ)や飲み物を広げているという、この光景。
 実は、これからゲームを始めるところなのです。

 その名は、『テーブルトーク・ロールプレイング・ゲーム』。  遊び方が書かれたルールブックを元に、「ゲームマスター(GM)」が作ったシナリオを、「プレイヤー」が作った「プレイヤー・キャラクター(PC)」で遊ぶ――
 という、たいへん変わったゲームです。

 そしてこれは、「リプレイ」と呼ばれる新感覚文芸媒体。
 テーブルトークRPGのプレイ風景を録音し、さらに編集して作成された読み物です。

 テーブルトークRPGの遊び方は、実際に遊んで見ないとなかなかよくわからないものですが、リプレイは、このゲームの雰囲気を、おおよそ察する手助けとなるのです。





  GM   このクリスタニアというのは、かの有名な『ロードス島戦記』と同じ、『フォーセリア』というファンタジー世界で遊ぶゲームです。
 話は、創世神話にまで遡ります。
 この世界には、〈始源の巨人〉から生まれた神々がいたんですが、ちょっと光と闇に別れて争いを始めてしまいまして。
 お互いに竜王ドラゴンロードを放った結果、互いに肉体を焼き尽くされて、精神のみの存在となってしまいました。
 そんなとき、光でも闇でもない中立の神々が、
『おいおい、これちょっと俺らヤベえんじゃねえの?』
 と言って、竜王から逃げて、南の方のクリスタニアという大陸に辿り着きます。
 で、
『おいおい、このままじゃ竜王に捕まっちまうよ』
『お! ちょっとそこの獣の姿を借りようぜ!』

 と、肉体を捨て、獣に精神を宿し、『神獣』となって、やり過ごしました。
  プレイヤーE   ドラゴンロード、意外と間抜けですね。
  GM   実は、1体にだけ見つかっちゃったんだけどね。頑張って封印したんだ。
 で、さらに頑張って、クリスタニア大陸の大地を海より高く隆起させ、何者も入ることのできない結界と為した。
 そしてそのなかで、自分の眷属となる人間たちを生み出し、社会を築き上げていったんですね。  
  一同   ふむ。
  GM   人間たちは、それぞれ仕える神獣の教えに従って、ネイティブ・アメリカンのように暮らしている。
 ただ、この大陸には“周期”と呼ばれるものがありました。
 数百年単位の歴史を、永遠にループさせてたんですね。
 でも、いろんな綻びが発生した結果、
『もう“周期”はやめよう!』
 ということになり、普通の時間の流れになりました。
 ついでに結界も解け、大地が海の高さにまで降りてきたので、某ロードス島戦記から流れ着いてきた“新しき民”との交流も生まれるようになった。
 現代のクリスタニアは、“新しき民”と交流したり、侵略者である“暗黒の民”と戦ったりと、忙しくなってまして。
 “神獣の民”たちは、部族の枠を超え、お互いに協力しようと一致団結。大陸各地に、傭兵団〈獣の牙〉を設立し、大陸の平和のために奔走するようになりました。
 そんななか、ある事件が勃発。
 神獣王の1柱、“礎の神獣王”にして“眠れる灰色熊”ウルスさんと、その部族たちが、いろんな災厄や病気、魔物といった“混沌”を封印し、長い年月をかけて、その存在を浄化していたんですが――。
  プレイヤーE   その熊さんが?
  GM   封印を解いちゃった。
  プレイヤーE   なんでっ!?(一同笑)
  GM   封印されていた人の中には、“新しき民”の僧侶がいたんですね。
『わーい、クリスタニアだー』
 とやってきたその人は、封印の部族に見つかり、『なんだおまえ! 変な奴! 混沌だな!』と封印されてしまいました。
  プレイヤーE   かわいそう!(笑)
  GM   そうなんだよ。それで、僧侶の仲間の冒険者たちが、『ふざけんな!』と直訴しまして。
 ウルスさんは、
『うむ、一理ある。よし、すべての封印をいったん解こう!』
 と封印を解きました。
 結果クリスタニアには、封印を解かれた混沌が押し寄せ、それはもう大変な騒ぎに。
  プレイヤーE   おい熊!(笑)
  プレイヤーB   計画性のない……(笑)
  GM   そんな“混沌”が溢れ返っているこの時代に、みなさんには、〈獣の牙〉の傭兵をやってもらおうというのが、今回のセッションです。
 では、キャラクター・メイキングに入ろう!



 今回は、駆け出しの1レベルではなく、中堅の3〜4レベルのキャラクターを、プレイヤーたちに作成してもらいました。

 ルールを参照し、ダイスを振って能力値の高さを決めたり、好きなクラスを選んだりして、キャラクターを作ること、およそ二時間――



  GM   では、完成したキャラクターを紹介してもらおうか。
  プレイヤーA   はい、『ショコラ・ビスキュイ』です。
 えっとお、知識と探究を司る神獣、“妖眼の斑猫”メルキシュに仕える、“悟りの部族”の戦士ウォリアーで、15歳の女の子です。
 獣人ビーストマスターでもあるので、猫っぽいタレントをいろいろ使うことができます〜。
  GM   『ビーストマスター』のクラスを持つ神獣の民は、その部族のエリート的存在で、神獣から与えられた様々な能力タレントを使いこなすことができるんですね〜。
 ちなみに、どうして〈獣の牙〉に?
  ショコラ   もちろん、神獣の教えに従って見聞を広めるのと、この溢れ出る知識を伝えるために!
  GM   ……。あふれでる? ちしき?
 (キャラクターシートを覗き込んで)……『知性度』が『標準以下8点』に見えるんだけど。
  ショコラ   本当は頭がよろしくないんですけど、頭がいいと思い込んでます(笑)。
  GM   なるほど(笑)。では、次の方。
  プレイヤーB   はい、『マッチャー・ハート』です。
 “新しき民”の、光と法を司る至高神ファリス神官プリーストです。
 年齢、7歳。男子。(一同笑)
  GM   7歳にして、神の声を聴いたとは……(笑)。そんな子が、どうして〈獣の牙〉に?
  マッチャー   (平然と)村にいる大人たちが、みんな馬鹿だったので。
 ここなら、多少は高尚な人がいるかな、と思って来ました。
  ショコラ   なるほど、私のような。(一同笑)
  GM   では、次の人。
  プレイヤーC   キャラクター名は『イグナッツィ』
 周期を司る“森の銀狼”フェネスの従者で、狩人レンジャーにしてビーストマスターです。
 冒頭の話にあった通り、クリスタニアからは“周期”が失われてしまいました。
 なので、新たにクリスタニアを導くための道を探して、〈獣の牙〉の噂を聞き、そこに身を置くことにしました。
  GM   なんてまっとうな……!(感涙)(一同笑)
  イグナッツィ   年齢は21歳ね。性別は男。
  GM   はい、次の方。
  プレイヤーE   名前は『スネーク』
 結界を司る“虹色の大蛇”ルーミスに仕える“結界の民”で、魔術師ソーサラーです。
 この人は、すごくひきこもりで、部屋の中で閉じこもって本を読むのが、本当は好きです。
 けれど、周期も結界も失われて、あちこち混沌が出ていて、おちおち本も読んでられないよ、ってことで、また充実したひきこもりライフをしたいがために、〈獣の牙〉に参加しました。
  GM   なんてアグレッシブなひきこもりだ。(一同笑)
  スネーク   ビーストマスターではないことがコンプレックスですが、読み漁った本の知識で、なんとかがんばろうとしています。男性、18歳。
  GM   なるほど。では、最後。
  プレイヤーE   はい。キャラクターは『エッグラーク』
 “戦いの神獣王”である“土色の牙猪”ブルーザに仕える“牙の民”で、精霊使いシャーマンのビーストマスターなんですが――
 怠惰な連中が多い“牙の民”にしては、珍しく勤勉な男で。
 幼少の頃より、人の役に立ちたいと思っていたんですが、キャラ作成時の能力値決定のダイス目が低く。(一同笑)
 普段怠けている連中より自分が劣っているというコンプレックスに耐え切れず、部族を出奔。
 〈獣の牙〉に参加し、『おれはできる! やればできる!』と〈ウォークライ〉のタレントを自分にかけて、人の役に立つためがんばる毎日です。
 まっとう。
  GM   いや、変な方向に猪突猛進してるだろ(笑)。
  エッグラーク   年齢は、24歳の男ですね。
  GM   しかもそのまま24歳にまでなってしまった……!(一同笑)
  イグナッツィ   いや、確かに、その年齢でそれは焦るわ(笑)。
  GM   では、このメンツでセッションを始めたいと思います。



Opening.01 『凶兆の予兆ハウル・オブ・アルケナ


  GM   さて、先も説明した通り、みなさんは〈獣の牙〉の傭兵です。
 すでにこのチームでパーティを組み、“封印の民”のビーストマスターである女性・『ラーマ』とともに、封印すべき混沌を見つけるべく、旅を続けているところ。
 今のところ、まだラーマさんが封印するレベルの混沌には出会っていません。君たちが撃破できるレベルの連中だったわけです。
  エッグラーク   “混沌”って、具体的には何なんです?
  GM   ぶっちゃけて言うと、なんでもあり。災厄だったり、魔物だったり、病だったり……。とにかくクリスタニアに害を為すものだね。
 封印が解かれて以降、“封印の民”たちは、『本当に封印すべき存在』を見極め、旅を続けている。
  ショコラ   ウチの雨漏りが……(笑)。
  GM   まあそれも混沌かもしれんが、封印するほどではないな(笑)。
 あんまり強力な混沌がいるようなら、ラーマさんが〈浄化パージ〉のタレントを使って、対象を強制封印し、浄化の眠りに就くことになる。
 さて、現在は、クリスタニア北部、ワイアーナ地方という丘陵地方を歩いています。
  エッグラーク   ……しまった。出奔したのに地元に帰ってきてしまった。(一同笑)
  GM   “牙の部族”の支配領域が、このワイアーナ丘陵地帯だからね(笑)。
 現在は、なだらかな丘陵が続く道のりを、すたすたと歩いています。
 その道筋に、ひとりの少女が倒れている。
  イグナッツィ   ……おや? 向こうで誰かが倒れているぞ?
  ショコラ   これは、お昼寝をしているところですね!(きらーん)
  エッグラーク   いや、そんな豪胆な奴にはお目にかかったことがないが……。
  GM   ついでに言うと、うつぶせにブッ倒れています。
  ショコラ   よし、私が起こしてきましょう。起きろ、ばこーん!(はたく)
  一同   待てい!(笑)
  ショコラ   『筋力』は18です。
  エッグラーク   人間の最高値じゃねえか!(一同笑)
  イグナッツィ   怪我はありますか?
  GM   見たところ、外傷はないですね。ハードレザーの鎧を着て、牙のように鋭い槍を持っています。
 で、顔が蒼白で息が浅い。激しく消耗している様子です。具体的には『精神力』が減少している。
  ショコラ   起きろ! ばこーん!
  エッグラーク   なんで力技なんだよ! おまえは知識を司る“悟りの部族”だろーが!
  スネーク   本を読んでいます。
  エッグラーク   おまえはもうちょっと興味を示せ!
  マッチャー   精神力が減ってるなら、プリースト魔法の〈トランスファー・メンタルパワー〉で、精神力を分け与えますよ。
  GM   はいはい。あなたが、神の奇跡によって加護を分け与えると、少女が、薄っすらと目を覚ます。
『私は……』
 朦朧としながら、彼女はつぶやく。
『追わなければならない……あの男を……』
 そして、また、がくりと気絶してしまった。
  イグナッツィ   おっと!
  エッグラーク   どう見ても、“牙の部族”だよなぁ……。
 しょうがねえ、近くに集落があるはずだ。そこまで運んで行ってやろう。
  イグナッツィ   そうか、エッグラークはこの近辺の出身だったな。
  エッグラーク   (嘆息して)……残念ながらな。
  スネーク   むしろ知り合いだったりしないのかね?
  エッグラーク   って言っても、俺より一回りは下だからな……。
  マッチャー   ……一回り下の彼女とは、能力値にどれくらいの開きがあるのだろうか……。
  エッグラーク   言うなァッ!(一同笑) 泣くぞ!?
 いいか!? 俺もおまえも別人なんだよ! みんな違って、みんないいんだよ!
  マッチャー   いいから早く運んでくださいよ。
  エッグラーク   くそったれぇ !!(一同笑)
  イグナッツィ   ではエッグラーク、その集落とやらの方に案内を頼む。
  GM   はい、集落に辿り着くまでには、1日半かかります。
 そうして、集落目指して歩いていると――
 みなさん! ここで、知覚技能でチェックだ!



 『できるかどうかわからない』ことをするにあたって、TRPGでは、『判定』という手段を用います。
 『クリスタニアRPG』では、それを『チェック』と呼んでいます。

 使用するのは、10面体ダイス2個。片方を10の位、片方を1の位として振り、出た目が、使用する技能値より低ければ、判定は成功です。
 いわゆる、パーセンテージ・ロールですね。



  一同   (ころころ、とダイスを振る)
  エッグラーク   09! 成功だ。
  ショコラ   86で失敗です〜。
  GM   成功した人たちは、右手側にある、ちょっと小高い丘の上に、巨大な猪の死体が転がっているのを見つけた。
 エッグラークは、チェックの必要なくわかる。こいつは、“土色の牙猪”ブルーザが産み出した眷属、“タスクボーア”です。
  イグナッツィ   なんだ、あれは?
  エッグラーク   ウチの神獣の眷属だよ。よく死んでるわ。
  GM   よく死んでねえよ!!(一同笑)
 曲がりなりにも7レベル・モンスターだ!(笑)
  エッグラーク   ……そのことに気がついた途端、ガタガタと奥歯が鳴り始める(笑)。
 あれ? 死んでる? マジで!? なんでっ!?
  スネーク   それは、衰弱死?
  GM   いえ、何度も何度も突き刺された傷が、致命傷となっています。
  エッグラーク   死んでから、どれくらい経ってる?
  GM   数日は経っている模様です。
 と、ここで。
 シャーマンであるエッグラークは、目の前のタスクボーアから、暗く冷たい“不死の精霊力”が湧き上がるのを感じる。
  エッグラーク   アンデッド……!?
  GM  『我が身は……!』
 完全に死体と化していながら――身体のあちこちから、しとどに血を滴らせながらも、タスクボーアは起き上がり、君たちの方を向く。
『我が身は、我が神獣の従者によって滅ぼされた……!』
  スネーク   聞きたくないんで〈コントロール・サウンド〉の魔法をかけていいですか?(一同笑)
  イグナッツィ   聞け! 聞くんだ、とりあえず!(笑)
 あれの言っていることが本当なら、あれを殺したのは、ブルーザの従者――同じ“牙の部族”の者ということになる……!
  マッチャー   え、まさかエッグラーク?
  スネーク   いや、エッグラークさんには無理だ。(一同爆笑)
  GM   ……続けていい?(笑)
『怒りのあまり――嘆きのあまり――! 不浄なる、不死の存在と化した我が身が呪わしい……! ああ、神獣に仕えし者たちよ! あの男を討たねば、いずれ、大いなる災いが、クリスタニアに訪れよう……!』
  イグナッツィ   あの男――とは……?
  GM   と、言ったところで、その身体が『ザザーッ……!』と崩壊していきます。
 不死の精霊力も消え去って、完全なる死体に戻る。
  エッグラーク   俺たちにこの言葉を伝えるためだけに……、その執念で、言葉を遺してくださったのか……。
  イグナッツィ   不死の存在となってでも、伝えねばならないことがあったわけか……。
  スネーク   聞かなかったことにしよう。
  マッチャー   早く集落に行こう。
  エッグラーク   なんでおまえら、そんなにやる気なーいの!!(一同笑)
  マッチャー   違うよ、任務第一なの。
  GM  『何か、混沌の仕業かもしれませんね……』
 と、ラーマさん。
  エッグラーク   あっ、しゃべった!(笑)
  GM  『混沌がいるならば、私が〈パージ〉せねばなりません』
  エッグラーク   (背負っている少女を見て)この子も、『あの男が』とかつぶやいてたわけだし。放っておくことはできねえよな。
  イグナッツィ   そうだな――
  スネーク   そうかな。
  エッグラーク   『そうかな』!?(一同笑)
  イグナッツィ   そこで疑問を呈すな!(笑)
  スネーク   でも、まじめに考えて、そのイノシシさんを倒すような男って、どんだけレベル高いんだよ?
  マッチャー   少なくとも、エッグラークさんよりは高いですね。
  エッグラーク   何!? 実はおまえら俺のこと嫌い!?(一同笑)
  イグナッツィ   とはいえ、託されてしまったしな。
  エッグラーク   とりあえず、タスクボーアの亡骸を丁重に葬って、集落に向かおう。
  GM   了解。では、そのまま集落に到着します。



 次回へ続く