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Double Cross


白銀領域





世界は、知らぬ間に変貌を果たしている――。



  GM   彼の身体から、今までにないレネゲイドの影響力が感じられる。
 地面から伸びた《氷の蔦》が君の右腕を絡め捕り、完全にその勢いを封じる。
 かつて相手取ったときとは段違いの、絶対的な格差が、そこにある。



人知れず、世界に散布された“レネゲイド・ウィルス”――
そのウィルスに侵された者は、超常的な能力を発揮するようになった。

レネゲイド・ウィルスがもたらす能力には、少なくとも13種のタイプ――
“シンドローム”が確認されている。

光を操るもの。血液を操るもの。物質を変容させるもの。肉体を変貌させるもの。
さらに、複数のシンドロームを発症した“クロス・ブリード”、“トライ・ブリード”の存在も、珍しくはない。

彼らは、人を超えたもの――“オーヴァード”と呼称される。
確かに、その能力は「人間離れ」という表現すら生ぬるい、
「人間ではありえない」と言う他ないものだった――。



  GM   《ブリザードブレス》が炸裂――動けない君を打ちすえる。
  三雲   咄嗟に右腕をパージして回避行動、ダメージを和らげます。
 なんだ、これ……!? こんな晴也さん、見たことない……!
  GM   晴也は、ただただ憎悪に浸された瞳を、その場の全員に向けている。
 様子がおかしいというのもあるが――これほどまでの力とは、誰も想定していなかった。「馬鹿な」といううめき声が、あちこちでささやかれている。



レネゲイド・ウィルスの――そしてオーヴァードの存在は秘匿され、
通常、一般の人間が知ることはない。

だが、いつどこで誰が感染していてもおかしくはないのだ。
あるとき突然、レネゲイド・ウィルスの“衝動”が沸き起こり、
オーヴァードとして覚醒するものは、少ないとはいえ、後を絶たない。

この能力を正しく管理しようとする者たちは、
“ユニヴァーサル・ガーディアン・ネットワーク(UGN)”という組織を結成し、
今もなお、オーヴァード事件に対処し続けている。

この能力を己が欲望のために用いる者たちは、
“ファルスハーツ(FH)”なる闇の組織に所属し、
非合法の事業や、テロ活動に身を染めている。

誰もが「こうだ」と規定する現実の裏側で、世界はこんなにも揺らいでいる――。



  GM   這いずる君の眼前に、分厚い氷の壁が『ずどん!』と突き立った。
 まるでここから先へ行くなと言わんばかりに、二人の間を決定的に隔てる。



レネゲイド・ウィルスは宿主を侵食する。
“力”を使えば使うほど、その“衝動”に呑まれていく。

そして、猛り狂う“衝動”に呑まれきったものは、本来あるべき理性を失い、
“衝動”の命じるがままに行動する怪物と化す――

“ジャーム”である。



  三雲   なんなんだ……なんなんだよっ!
 氷の壁に拳を叩きつけます……!



こっちに来いよ、とジャームは言う。
これこそが、あるべき姿だと。
自らを縛りつけ、抑制し、日常と非日常の狭間で揺れ動くなど、
愚かな煩悶に過ぎないのだと。

どうせ、おれたちは変わってしまった。人間から外れてしまった。
指先ひとつで誰かを殺せる。日常という枠から外れてしまったのだ。
おまえの友が、家族が、恋人が、おまえの真実を知ったとき――
そこには拒絶があるだろう。
誰もおまえの“力”を受け入れはしないだろう。

だから来い。“衝動”に身を委ねろ。
そうすれば、もう、葛藤することはない。悩まなくてすむ――。



  ミカゲ   三雲の傍に近づくよ。
 あいつ……、なんか、おかしかったな。
  三雲   そんなこと、見ればわかりますよ……。
 でも、何がどうなっているのか……見ても、さっぱりわからないッ……!



だが、それを受け入れられない者もいる。
彼らは戦う。ジャームに抗う。
私欲のままに“力”を使い、日常を脅かす敵と、戦い続ける。

真実を知れば、力なき常人たちは、恐怖から来る叫びを上げるだろう。
真実を知り、怪物と化した者たちも、嘲りに満ちた笑いを放つだろう。
裏切り者と――“ダブルクロス”と呼ぶだろう。

それでもいい。それでもいいから、守りたい。
友を。家族を。恋人を。日常を――帰るべき世界を。



  ミカゲ   ……訊くしかないな。
  三雲   晴香……晴香さぁん……! 涙を流しながら、壁をもう一度殴ります。
  GM   では、晴也はそのまま、霧氷の彼方に消えていった――。



ダブルクロス。
それは、異名である。
いつか、日常に帰るために抗い続ける者たちの。
決して、誇りを見失わないための。
意志を表す、呼び名である。



PrePlay.

  GM   では、セッションを始めます!
  一同   はーい。



 数人が同じテーブルに着き、紙や筆記具やトランプや飲み物を広げているという、この光景。
 実は、これからゲームを始めるところなのです。

 その名は、『テーブルトーク・ロールプレイング・ゲーム』。  遊び方が書かれたルールブックを元に、「ゲームマスター(GM)」が作ったシナリオを、「プレイヤー」が作った「プレイヤー・キャラクター(PC)」で遊ぶ――
 という、たいへん変わったゲームです。

 そしてこれは、「リプレイ」と呼ばれる新感覚文芸媒体。
 テーブルトークRPGのプレイ風景を録音し、さらに編集して作成された読み物です。

 テーブルトークRPGの遊び方は、実際に遊んで見ないとなかなかよくわからないものですが、リプレイは、このゲームの雰囲気を、おおよそ察する手助けとなるのです。



  GM   今回使用するのは、現代を舞台に、レネゲイドウィルスという特殊なウィルスに感染したキャラクターで遊ぶゲーム、『ダブルクロス The 3rd Edition』です。
 まずは、シナリオの傾向をつかむための『トレーラー』を読み上げます。



ジャームと化したUGNエージェント、西澤晴也の力により、
白木町は白銀の世界と化した。

住民は氷漬けになり、道路は閉ざされ、電波は阻害され――
白木町は、完全に孤立した。

UGN支部に向かって、静かに歩みを進める晴也。
凍てつく憎悪の瞳には、もはや何も映らない。

迫り来る、白銀の脅威――下される、非情の決断。
閉ざされた霧氷の箱庭で、風花のように真意が踊る。

ダブルクロス the 3rd edition
『白銀領域』
- Shilver Sight -

ダブルクロス――それは、裏切りを意味する言葉。



  GM   という感じのシナリオです。
 主に、西澤晴也を主要NPCとして物語が進んでいきます。
 では、まずPC1のハンドアウトから。



PC1用ハンドアウト

シナリオロイス:西澤晴也 推奨感情:尊敬/劣等感 推奨カヴァー:UGN関係者

 あなたは、UGNエージェントである西澤晴也にしざわ・せいやと、その相棒である荒井晴香あらい・はるかとチームを組み、オーヴァード事件を解決してきた。
 面倒見がよく、優れたオーヴァードである晴也のことを尊敬していたし、憧れてもいた。
 だから、いつのまにか忘れていたのかもしれない。レネゲイドウィルスのもたらす力は、絶望と紙一重であることを。
 西澤晴也は、ジャームと化した。あなたを救うため――その力を引き出しすぎて。討たねばならない、敵となったのだ。



  GM   というわけで、PC1を生かすために晴也はジャームになってしまいます。  晴也の弟子というか後輩というか、そんな感じですね。
  プレイヤーA   なるほど。
  GM   では、続いてPC2のハンドアウト。



PC2用ハンドアウト

シナリオロイス:兄(一真かずま) 推奨感情:親愛/不安 推奨カヴァー:UGN関係者

 あなたは天涯孤独の身であった。
 兄と二人で街中をさまよううちに、オーヴァード能力に目をつけられ、気がつけばファルスハーツに取り込まれていた。
 兄はファルスハーツのエージェントとして働き、あなたはFHのスパイとしてUGNに入った。
 あなたに危険な任務を与えぬようにと、ろくな戦闘能力もない兄が、必死になって上司に頭を下げた結果だった。
 そんなあるとき、兄が死んだという情報がもたらされる。殺したのは、あなたがUGNで世話になった男……西澤晴也。
 ジャームと化した晴也には、UGNから殺害指令が出ている。今なら、何の不都合もなく、彼を殺せる。仇を討てる。
 だが……本当に、それでいいのだろうか?



  プレイヤーB  『世話ンなったなァ〜? 西澤晴也よォ?』
  GM   本当にそれでいいのだろうか。(一同笑)
  プレイヤーB   すいません、ダメでした(笑)。
  GM   いつのまにかファルスハーツに入っていて、UGNにスパイとして潜り込んで、西澤晴也に世話になったという感じです。
 難しい役どころだけど、最終的には他のPCと目的を共有してパーティを組んでもらいたい(笑)。
  プレイヤーB   はいはい。
  GM   では、最後にPC3用ハンドアウト。



PC3用ハンドアウト

シナリオロイス:荒井晴香 推奨感情:友情/憐憫 ワークス:レネゲイドビーイング

 あなたはUGNに協力する立場にあるレネゲイドビーイングだ。
 UGNに、というよりも、西澤晴也と荒井晴香に、というのが正しい。彼らは持ち前の気さくさであなたに協力を呼びかけ、今では仕事に関係なく、親友と呼べる間柄になっている。
 だが、ジャーム研究を生業とする知り合いのレネゲイドビーイング“J”のもたらした情報によれば、晴香は死に、晴也はジャームと化したという。
 友がレネゲイドに呑み込まれたというのなら、解放してやらねばなるまい。それが、彼らの望みでもあるはずだ。



  GM   ということでPC3は、人間ではなく、レネゲイドウィルスが意思を持った存在、レネゲイドビーイングです。
 ではここから、好きなハンドアウトを選んで、キャラクターを作っていただきましょうか。



 ルールブックに記載されたルールにのっとって、キャラクターを作成する一同。
 そして。



  GM   では、PC1から順にキャラを紹介してもらいましょう。
  プレイヤー    PC1の戌来三雲いぬき・みくも、年齢は19歳です。
 もともとはごくごく普通の幸せな家庭に生まれたはずだったんですが、オーヴァード事件に巻き込まれ、僕だけ生き残ってしまって。晴也さんと晴香さんに拾ってもらって、UGNチルドレンとして教育を施されました。
 ただ、どうしようもなく性格が臆病で、エージェントとして使いものになるの? どうなの? ダメなの? 死ぬの? という感じだったんですが、ダメでした。
  GM   ダメだったのか(笑)。
  プレイヤー    でも、晴也 さんや晴香さんの力になりたいので、 研究施設Rラボの千城寺薫せんじょうじ・かおるという人に協力してもらって、機械の身体を手に入れました。
 それと同時に戦闘プログラムを組み込まれ、ミッション優先の考え方ができるようになりました。
 シンドロームがブラックドッグのピュアブリードで、Dロイスに『戦闘用人格』を取っています。
  プレイヤーB   なるほど。
  三雲   普段はそんなふうになよなよしてて、晴也と晴香の後をついていく金魚のフンなんですが……
 思ったより深刻な状況でビクビクです。
 僕のキャラクターは最後までメンタルを保てるんでしょうか。
  GM   がんばれ! 日常に戻れ!(笑)
  三雲   でも僕の日常、片方は死んで片方はジャーム化してんですよ!? 僕の日常はドコ!?(笑)
 ……と思ったけど、むしろ武器になるので、がんばってロールしていきます。
 晴香さんのことをお姉さん以上に慕ってはいるんですが、晴也さんに勝てるわけないし、下手に気持ちを露わにして拒絶されたら、僕、首吊っちゃうし。
  GM   早ッ!
  三雲   基本メンタル弱いんで。
 データ的には、白兵戦闘特化型です。
 《ウェポンマウント》《ハードワイヤード》があるので、右腕に仕込んだパイルバンカーで戦います。
 コードネームは“鉄杭ペネトレイター”。他人の意見に流されやすい自分には似合わないと思うけど、みんなにつけてもらったコードネームなので、がんばろうと思ってる。
 でもみんな、途中でメンタル的に死んだらゴメンね。
  GM   きっと、千城寺薫によって、自傷行為禁止プログラムが導入されてるんじゃないかな(笑)。
  プレイヤーC   自殺しようと思ったら、急に自分をボコボコに殴って、自殺までたどり着けない身体になる。(一同笑)



 三雲は、1種類のシンドロームのみを備えた純粋種、“ピュアブリード”です。
 特殊能力――“エフェクト”の方向性が限定されている反面、より強いエフェクトを使いこなすことができます。
 “ブラックドッグ”は電気を操り、またそれによって機械操作も得意とするシンドロームです。電気のエネルギーを武器にすることも可能ですが、三雲の場合、自らの肉体を機械化し、精密操作する戦法を選んでいます。

 さらに三雲は、キャラクターに特殊な設定とデータを与える“Dロイス(ディスクリプト・ロイス)”として、《戦闘用人格》を取得しています。
 エフェクトを使用すると、レネゲイドウィルスの“侵食率”が上がっていくのですが、それが100を超えたとき、爆発的に戦闘能力を強化するというDロイスです。

 幼い頃からUGNの庇護下でエフェクトの使用や戦闘の訓練を積んできた“UGNチルドレン”としては、申し分ないステータスです。



  プレイヤー    PC2の爪紅 命都つまぐれ・みことです。シンドロームはサラマンダーピュア。
 年齢は17歳、性別は女性。ワークスはUGNエージェントCで、肩書きカヴァー“UGNエージェントの皮をかぶった妹のような何か”。
  GM   長ッ。
  命都   兄の一真と天涯孤独の日々を送っていた子供時代、そのオーヴァード能力をファルスハーツに見込まれ、幹部エージェントである“ドッグマスター”に拾われました。
 その後、兄が妹思いだったのか、頭を下げてもらって、あまり戦闘行為のないようなスパイ行為に回されて……
  三雲   逆に危険じゃない?
  命都   まあ、諜報活動だけなら、直接戦闘はしないから、安全と言えば安全。
 UGNでは後方支援役として、特に活躍しない日々を送っております。
 《焦熱の弾丸》をチョボチョボ撃ったり、味方への攻撃を《閃熱の防壁》で焼いたり、〈知識:医療〉2LVで救護兵まがいのことをしたり。
  GM   まあ、後方支援としてはやや有能な……という演出をしつつ。
  命都   演出をしつつ、実は《プラズマカノン》が撃てます。(一同笑)
 というわけで、こそこそとやっているんですが、UGNの人たちは基本的にいい人ばっかりで、心苦しいですね。
  GM   了解。兄のシンドロームは、戦闘能力があまりないタイプのキュマイラ/ブラックドッグです。
  命都   かわいそうだ(笑)。
  GM   性格的に戦闘に向かないんだけど、キュマイラなのでパワーはある。
 だからこう、『てめえちょっと前線出ろや』と言われて、『じゃあその代わり、妹には安全な任務を回してください』とお願いしたところ、スパイ任務が回ってきたと。
  プレイヤーC   お兄さん、騙されてる(笑)。
  命都   コードネームは“スパークスロワー”。投げる火球の威力がちゃっちいので、ファイアスロワーに満たない“火花投げ”と呼ばれています。



 命都もまた、三雲同様、ピュアブリードのオーヴァードです。
 彼女は熱を操る“サラマンダー”シンドロームの発症者。炎を操るほか、熱を奪うことで冷気を生み出すことも可能ですが、命都もっぱら火炎系のエフェクトを得意としています。

 オーヴァード能力によるテロ活動などを行うファルスハーツの一員、という設定ですが、UGNにスパイとして入り込んでいるということもあり、ゲーム的には“UGNエージェント”としての能力を備えています。

 なお、兄である一真は、“キュマイラ”とブラックドッグの2種類のシンドロームを発症したクロスブリード。キュマイラは、自らの肉体を強化・変貌させる能力を秘めたシンドロームです。



  プレイヤー    PC3のミカゲ。コードネームは“隕鉄フォールンスター”。
 シンドロームはサラマンダー/バロール。ワークスはレネゲイドビーイングで《オリジン:ミネラル》。
 カヴァーは「庭石」。
  三雲   どこの!?(笑)
  ミカゲ   えーとですね、ライフパスで[出自:孤独な魂]という設定があるので、宇宙から独り、降ってきました。
 ただ、その後、生命活動が停止しておりまして。
 その間、UGNの管理する博物館に保管されていたようです。
  命都   UGNは手広いなぁ。
  ミカゲ   で、ガラスケースに入れられていたら、
『ん? なんだこの箱は。ガタガタ』
 とかやっているところに、UGN日本支部長である“リヴァイアサン”霧谷雄吾がやってきまして、『こいつ、しゃべるぞ』と。
  GM   早ッ(笑)
  ミカゲ   そして、オーヴァード能力を認められ、晴れてUGN支部の庭石となりました。
  命都   名物だな(笑)。
  ミカゲ   ちなみに、最初に見た霧谷雄吾に自動的にインプリンティング(刷り込み)されてしまったので、UGNに絶対的な忠誠を誓っています。(一同笑)
  GM   なんてUGNに都合のいい(笑)。
  ミカゲ   そんな感じで、普段は17歳くらいの少年の姿になることもあります。
 ちなみに星座はオリオン座。
  GM   つうかそれ出身じゃないですか!(笑)
  ミカゲ   宇宙生活が長いので、基本的に、加速がついたら止まりません。



 ミカゲは、サラマンダーと“バロール”のクロスブリード。“バロール”は重力や時間を操る特異なシンドロームです。

 彼の最大の特徴は、人間ではなく、“レネゲイドビーイング”という存在である、というところにあります。

 レネゲイドビーイングは、人間以外の存在がレネゲイドウィルスに感染するなどして、意志を持つに至った存在です。多くは人語を解する知能を持ち、それどころかレネゲイドウィルスの力で人間に変化することも可能です。
 彼らは共通して“人間を知りたい”という欲求を持っている、とされています。

 で……ミカゲはどうやら、宇宙から降ってきた隕石のレネゲイドビーイングのようです。《オリジン:ミネラル》というエフェクトが、彼が鉱物のレネゲイドビーイングであることを表現しています。



  GM   えーと、では、このメンツで、セッションを始め、始め、始……。
  三雲   PC間ロイスは?
  GM   おっと、そうだ、それがありましたね。やりましょう。
 少しはマシになるかもしれない。
  三雲   このGMの言い草どうよ!



 “ロイス”は、キャラクターの心のつながりを現すデータです。

 たとえば、三雲にとっての晴也や晴香、命都にとっての一真、ミカゲにとっての霧谷といった“大事に思っている存在”などが該当します。
 ロイスが多ければ多いほど、日常とのつながりが高まり、ジャームに陥る危険性が減少するのです。
 そして、セッションを開始する前には、PC同士の間でロイスを取得することになります。

 なお、それぞれのロイスには「ポジティブ」「ネガティブ」の2つの感情を取得できます。いつもどちらを表に出しているかは、プレイヤーが自由に決めることができます。



  三雲   命都に……(ダイスをころころと振る)ポジティブが幸福感、ネガティブが嫉妬。
  ミカゲ  『くそっ、あの二番弟子め……!』(笑)
  三雲   あ、じゃあそれで。『僕以外にも弟子をとるなんて……!』と。
 ここ器小っちゃいんで。
  GM   小さすぎる!(笑)
  三雲   あれだよ。晴香さんは、命都の方をかわいがるんですよ。
 とりあえず、「ポジティブ:幸福感」を表に出しておきます。
  GM   では、次は命都から庭石へ(笑)。
  命都   (ころころ)ポジティブが幸福感。
  ミカゲ   夏はぬくぬくするよ(笑)。
  命都   (ころころ)ネガティブ:猜疑心。宇宙から来たとか、こいつ本当に大丈夫か?(笑)
 とりあえずネガティブを表に出しておきましょう。
  ミカゲ   こちらから三雲には……(ころころ)ポジティブ:慈愛、ネガティブ:隔意。
 あいつ何グジグジしてんだろ。石的にありえねーわアレ。(一同笑)
 とりあえず表は、後輩だしポジティブで。あいつはワシが育てた。
  三雲   いや、僕、晴也さんに育ててもらってるんですけど!
  ミカゲ   晴也はワシが育てた。(一同笑)


Opening.01 『温もれる日々シャイニィ・デイズ

  GM   では、まずオープニングから始めるわけですが……
 ハンドアウト通りだと、晴也さんが即ジャーム化しちゃうので、まず、晴也・晴香コンビと各PCが絡むシーンを、それぞれ入れていこうと思います。
 主に、晴也と晴香のキャラクター性を紹介するのが目的。
  三雲   ということはあれか! いちゃつく様を見せられるのか! くそっ!(笑)
 オープニングでメンタルブレイクします。
  GM   それはほら、あれですよ。晴也と晴香というコンビが、君といちゃつくシーンだと思えば。
  三雲   (すごい笑顔)
  GM   顔芸はヤメテ。(一同笑)
 では、まず三雲と命都が、晴也に特訓をつけられているシーンから行きたいと思います。立場が近いので、一緒のシーンでいいかなと。
 登場する2人は侵食率を上げてね。
  三雲   (ころっ)6点あがって45です。
  命都   (ころっ)1点上がって34です。



 エフェクトを使用したり、場面(シーン)に登場したりすると、キャラクターはレネゲイドウィルスの侵食率を上昇させなければなりません。
 侵食率が高い状態でエンディングを迎えると、ジャーム化してしまう危険性があります。
 その際、ロイスが多ければ多いほど、エンディングの前に侵食率を減少させることが可能です。



  GM   では、君たちはUGN白木町支部の地下道場で、晴也に訓練をつけてもらっています。
 この時間帯には、君たちと晴也、晴香コンビしかいません。
 晴香さんは直接戦闘能力がないので、正座して審判役です。
  三雲   道場て。トレーニングルームとかじゃないんですか(笑)。
  GM   君たちの目の前には、20代前半の、スーツをラフに着こなす青年――西澤晴也の姿。
『準備はいいか、おまえら?』
  三雲   は、はい、たぶん……! と、訓練用のジャージ姿で答えてます。
  命都   こちらも、トレーニングウェアですね。
  GM   ガチガチに緊張している三雲を見て、軽く笑う。
『そんなに力入れんなって。あんまり痛くしねえからよ』
  三雲   いや、でも、いつもそう言って、だいたい痛い目にあわされるような……。
  GM  『まあ、ちょっと霜焼けにはなるかもしれんがな――』
 言うや、ズ、と周囲の気温が下がり始める。サラマンダー/オルクス/ブラックドッグのトライブリードである晴也のエフェクトが発動しようとしているようだ。



 晴也は3種類のシンドロームを発症したトライブリードです。
 “オルクス”シンドロームは、自らのレネゲイドウィルスの“因子”を展開することで、周囲を“領域”と化し、操る特性を持っています。

 また、晴香は“ソラリス”と“ハヌマーン”のクロスブリードです。
 “ソラリス”は幻覚作用を持つ物質を使って相手を幻惑に陥れるシンドローム、“ハヌマーン”は音波を操ったり、反応速度を極限まで高めたりすることのできるシンドロームです。



  三雲   じゃあ、いつもの通り、僕がフロントになるので、バックお願いしますね、命都さん。
  命都   は、はい。がんばって……くださいね?
  三雲   う、うん……。
  GM  『緊張すんなって言ってるだろ? おまえらは俺が鍛えてるんだから、自信持てって』
  命都   まあ、普段から鍛えられてるから、相手の実力のほどが分かるというか……。
  GM  『よし、じゃあ……』一歩、無造作に踏み出す。『行くぜ』
  三雲   は、はいっ!
  GM   では、そこから烈しいエフェクト(能力)が飛び交い――
  三雲   こ、こいつ、自分の手の内を見せてくれないぞ!?(笑)
 何を組み合わせてるんですか? 晴也さんのエフェクトはどんなのなんですか!?(笑)
  GM   烈しいエフェクトが飛び交い。(一同笑)
 やがて、『ぐはっ……』と言って、晴也の身体が床に伏した。
  三雲   ……あ、あれっ!? 勝っちゃった!?
  命都   ど、どうにか……?
  GM   ぴぴー、と晴香が笛を鳴らして、手旗を上げる。『勝負あり』
  三雲   は、晴香さんっ! やりました! やりましたよ!
  GM   うむうむとうなずき、二人の頭を撫でる晴香。
『で?』
 と、冷たい視線を、床に倒れた晴也に注ぐ。
『君はそこで何をしてるのかな』
 よろよろと起き上がりながら、頭をかく晴也。
『ええと……まあ。うん。あれだ。予想外に強かったッ!』
  ふたり   イエー。(ハイタッチ)
  GM  『ま、まあなんだ。ほら。俺の訓練の賜物っていうか?
 いやー、でもまさか、やられるとは思わなかったぜ』
 朗らかに笑っている。
  三雲   いや、まさか、こちらも勝てるとは。せめて一太刀くらいのつもりだったので……
  GM  『おまえらが思ってるより、おまえらは強くなってるってことさ』
 そんな感じで稽古が終わって。
『しかしまあ、おまえらもちゃんと“衝動”を制御できるようになったな』
  三雲   ええ、そうですね、まあ……“自傷”の衝動は、あなたがた二人といるおかげでずいぶん抑えられてます的な笑みを。
  命都   こちらは、“衝動”の制御はファルスハーツで訓練済みなんだけど、言えるわけないよなぁ、という困ったような笑顔を。
  ミカゲ   ふたりとも、顔の上に文字がいっぱい出てる(笑)。
  GM   しゃべれ(笑)。
『命都は最初からレネゲイドコントロールがうまかったけど、三雲は散々だったからな』
  三雲   そうですね……。昔はご迷惑をおかけしました。
  GM  『でも、今のおまえは、命都と組めば、俺だって倒せるようになったってわけだ』
 にやりと笑う。
  三雲   そ、そうですね、と答えながら、ようやく『自分、スゲェことやっちゃったんだな』という自覚が出てきて、おおお、と身体を震わせてます。
  GM  『ま、そういうことだから、もうちょっと自信を持てよ』
  三雲   はい!
  GM  『よし、じゃあ訓練も終わったことだし、食堂にでも行くか。
 今日はなんでもおごってやるぞー。そうだな、俺も最近出たメニューが気になるしな……』
 とか言ってると、晴香が『……メシ抜き』とぼそりと言う。
  三雲   あ、負けたからですか?
  GM   負けたからです。
『え? ウッソ、マジ?』
 そんな晴也を尻目に、君たちの背中を押して、ずんずんと歩き去ろうとする晴香。
  命都   あの、えっと……あれ? 後ろを気まずそうに振り向きながら。
  三雲   い、いいんですか?
  GM  『手加減したとかじゃなく、本気でやってあれだからね』
 しみじみとうなずく。
『あいつにも、危機感ってものを持ってもらわないと』
  命都   まあでも、二人がかりでやってましたからね。
  GM   逆に言えば、今までは二人がかりでも勝てなかったんですよ。
 なので今回もそんな感じかなーと思いきや、予想以上に二人が強くなっていたという。
 だから、晴香的には、『増長すんな』と晴也に言ってる。
 厳しい飼い主の目を見ながら、『しくしくしくしく……』という涙を無視して、二人の背中を押していく。
  三雲   思ったよりスパルタだった(笑)。やっぱり晴香さんは頼もしいなぁ。
  GM   君たちの背中を押しながら、『君たちの分は、私がおごってあげるから』と頭を撫でてくれる。後輩には甘い。
  三雲   わ、わーい(笑)。
  GM   では、君たちの日常の演出としてはこんな感じで。シーンを切って、次に行きましょう。


Opening.02 『遥かなる出会いクローズ・エンカウンター

  GM   次はミカゲと絡むシーンですね。
 UGN支部に庭石が置かれたと聞いて、晴也・晴香がやってくる、出会いのシーンをやってみましょうか。
  ミカゲ   (ころっ)侵食率は、2上がって39。  庭先に石が置かれていて、横には“リヴァイサン”からの贈答花が(笑)。
  三雲  『なにあれ。レネゲイドビーイング?』『“リヴァイアサン”霧谷雄吾が直々に置いて行ったんだってー』
  ミカゲ   ひそひそ言ってる奴らを見かけると、こう、レネゲイド的な何かを、もわーっと出す。
  GM  『ひぃぃぃぃ、何か出てるぅぅぅ!』『ウィルス漏れてるぅぅぅ!』
  ミカゲ   はっはっは。
  GM   そんなことをやってると、ぴぴー、という笛の音がして、石の頭を手旗で叩かれる。
  ミカゲ   ぐはあっ。な、何奴!
  GM   見上げると、ちょっと厳しい顔をしたスーツ姿の女性が立っている。
『むやみにウィルスをまき散らしちゃいけません』
 そんなことを言ってると、ひょこひょこと、同じくスーツ姿の青年が近づいてくる。
『お? これか? レネゲイドビーイングの石ってのは?』
  ミカゲ   くっ、挟まれるものかあー! 17歳の少年形態になって走り出す。
  GM   男がパチンと指を鳴らすと、君の両足が氷漬けになって倒れる。
 で、近づいてきた男が無造作に君を抱え上げ、高い高いする。
『へー、これがレネゲイドビーイングかー。すげえなー、初めて見るわー。すげー』
  ミカゲ   くっ、離せ! オレをどうするつもりだー! 隕石だぞー!
  GM  『マジ? 隕石なの? すっげー。どこ? どこ出身?』
  ミカゲ   ぬう、誰がオリオン座などと言うものか!
  GM  『へー、オリオン座かー、すげー』
  ミカゲ   貴様その情報をどこからッ!?(一同笑)
  GM   とかやってると、『いーかげんにしなさい』と女が手旗で男を殴り、君は解放される。
  ミカゲ   助かった。あんた、ひょっとして味方かい?
  GM   こっくりとうなずく女。
『こいつの暴走は、だいたい私が止めることになってるから』
  ミカゲ   今回ばかりはどうなるかと思ったよ。レネゲイドに感染した奴は、何をするかわからない。
  GM  『いや、それは……まあ、そうだな』
 どこか神妙にうなずく男。
『ジャームになっちまったりすると、何をやらかすかわかんねえからな』
  ミカゲ   お、意外と話がわかるヤツ。
 いやー、オレの仲間も、暴走してジャームになって、話聞かなくなっちゃってさー。
 しょうがないから、砕けてこっちに逃げてきたってわけ。
  GM  『大変だったんだね』
 しみじみとうなずいて、晴香が頭を撫でてくる。
  三雲   (柱の影で歯ぎしり)『ぎりぎりぎりぎり……』(一同笑)
  ミカゲ   なんだよー、オレだって子供じゃねーんだぞー!
  GM  『でも、見た目子供でしょ?』なでなで。
  ミカゲ   あうあう。
  三雲   ぎりぎり。
  GM  『晴香は後輩に甘えからなあ。
 まあいいや。とりあえず、おまえはずっとここにいるのか?』
  ミカゲ   ああ。何かあったらUGNのために戦ってやるぜ。なんせ、オレは霧谷雄吾に助けられたからな。
  GM  『なるほどねえ。あの人は、優しいっつうか甘いっつうか、そういう人らしいからな』
  ミカゲ   だから、何かあったら頼ってくれていいぜー。
 そういえば、あんたらは何なんだい?
  GM  『ああ、俺たちは、このUGN支部のエージェントだよ。悪い奴らをとっちめるのが仕事さ』
  ミカゲ   それをしたら、霧谷が喜んでくれるのか?
  GM  『ん、まあ、たぶんな。戦う相手は、ちゃんと見極めねえといけねえけど』
  ミカゲ   よし。じゃあ、見極めるのはおまえに任せた。戦うのはオレに任せろ。燃えてきたぜえー!
  GM  『え? ええと、じゃあ……うん。俺も、見極めるのは晴香に任せたッ!』
 ぴぴー、がすっ。(一同笑)
  ミカゲ   じゃあ、よろしく頼むぜ、相棒。
  GM  『ああ、こっちこそよろしくな』快活に笑う。
 そんなことをしてると、『晴也さん、晴香さん、ちょっと来てくださーい』とUGN職員に呼ばれて。
『じゃあ、また今度な。いっしょにメシでも行こうぜ』『また来るね』
  ミカゲ   なんかあったら呼べよー、と溌剌な漫画記号を出して答える。
  命都   ああ、あの、楽しそうな時に使う、ギザギザのマーク(笑)。
  GM   じゃあ、最後に晴香が名残惜しそうに頭を撫でたりなんかして。
  ミカゲ   や、やめろぅい!
  三雲   ぎりぎりぎりぎり……。
  GM   そんな感じでシーンを切ります。


Opening.03 『絶望の慟哭デス・ディメンション

  GM   それでは、三雲のオープニングです。
 晴也、及び晴香とチームを組んでオーヴァード事件に取り組んでいたところ、激しい戦いのせいで、晴也がジャーム化してしまう。そんなシーンです。
  三雲   はい。
  GM   君と晴也・晴香は、ファルスハーツがオーヴァード化薬を売りさばいているという話を知り、アジトを突き止めました。
 オーヴァードを増やすとか、資金を得るとか、研究結果を試すとか、そういった目的のために、人間にレネゲイドウィルスの力を発現させる薬を売り込んでいるようだ。
  三雲   よくある話ですね。
  GM   で、君たちはそのアジトである郊外の廃工場に突入せんとして、近くの草むらに身を潜めているところです。
『よし、じゃあ確認するぞ。いったん中に入ったら、全員を拘束する。FHの奴らは抵抗するだろうから、ぎったんぎったんにしていい。まあ、殴る相手は選べってことだ』
  三雲   わかりました。
  GM  『じゃあ行くぜ!』
  三雲   “ペネトレイター”起動、と義肢を戦闘状態にして、壁を殴って破壊します。
  GM   中に乗り込むと、当然、薬を買いに来ていた一般人もいるわけで。
『う、うわあっ!』『なんだっ!?』
 驚く彼らを、晴也の氷の渦が絡め捕り、気絶させていく。《ワーディング》のエフェクトを使い、レネゲイドウィルスの力で一般人を無力化した。
 《ワーディング》が効かないファルスハーツのエージェント――オーヴァードたちが、『なんだ貴様らっ』とエフェクトを使って襲いかかってくるが……
  三雲   無機質な表情で痛覚を遮断し、攻撃を受け止めます。掌からパイルバンカーを撃ち出して反撃。
  GM   一人目が、身体をぶち抜かれて倒れる。
『怯むなっ』
 エージェントたちが拳銃などで遠距離攻撃を仕掛けてくる。
  三雲   ごろごろと物陰に転がって、遮蔽を取ります。
  GM   すると、同じく遮蔽を取った晴也が、『俺が仕掛ける』というハンドサインを送ってくる。
  三雲   了解、と返します。
  GM   それを受けて、晴香が歌声を響かせる。
 《ハードビート》+《エンジェルヴォイス》で、晴也の能力を強化。
 晴也が放つ《ブリザードブレス》の吹雪が、銃を持ったエージェントたちを一気に叩き伏せる。
  三雲   うらやましいと思いつつ、倒れた敵を手錠で拘束して回る。
  GM   君たちの鮮やかな手際で、FHのエージェントは瞬く間に鎮圧されていく。
 最後には、奥の方にいた二人のエージェントだけが残った。
 すると片方が、もう片方の青年の首筋にアンプルを撃ち込む!
『な、何をっ?』『てめえは残って足止めをしなッ』
 アンプルを打った男は、青年を蹴りつけて逃走する。
  三雲   (命都のプレイヤーを見て)お兄ちゃんと見た。
 とりあえず、追いかけると宣言してみようかな。
  GM   すると、アンプルを打たれた青年が、駆け込んでくる君の身体を凄まじい腕力で張り飛ばした!
  ミカゲ   『ズガアッ!』 君は死んだ。(一同笑)
  GM   《リザレクト》すればいいと思うよ。(笑)



 侵食率が100を超えていないオーヴァードは、倒れても《リザレクト》のエフェクトで復活することができます。
 なお、ここは演出で処理しているので、実際には使っていません。ただの冗談です(笑)。



  三雲   凄まじい剛腕で薙ぎ払われたのを、パイルバンカーで受け止めるんですが、壁際に叩きつけられる。
 なんだ、この力はッ……!?
  GM  『ごあぁああぁぁあぁああああッ……!』
 絶叫する青年のスーツが内側から張り裂け、身体全体の筋肉が獣毛に覆われつつ肥大化。
 さらに、毛の間には『ばぢっ……ばぢばぢっ』と蒼白い火花が散っている。
  三雲   キュマイラ/ブラックドッグ……!?
 身体を動かそうとするんだけど、回路が電流でイカれて動けない!
  GM   あっ、そうだね。《スタンボルト》のエフェクトで[放心]状態です。
  三雲   ずるい!(笑)
  GM   自分で言ったんじゃん!(笑)
『あの薬、ジャーム化かッ!?』
 君と相手との間に駆け込む晴也。
  三雲   晴也さん、無茶だ! 前衛の僕でこれなんだから、後衛の晴也さんじゃひとたまりもないですよッ!
  GM  『ンなもん気合いだッ!』
 《ブリザードブレス》の冷気を吹雪かせるが、相手はまとった電流でたやすくそれを弾いてのける。
 さらに、帯電した《獣の一撃》が、晴也の身体を横ざまに打ち払った。
  三雲   晴也さんッ!
  GM   相手はゆっくりと君に近づいてくるんだけど、
『させるかよッ』
 晴也と晴香が、相手に組みついた。
 さらに、晴香が必死の形相で歌声を響かせる。
 味方を強化するいつもの“歌”に、バッドステータスを回復させる《音波調律》を組み込んで、君の[放心]を回復した。
  三雲   おお、イカれた脚部アクチュエータが動くように。レネゲイドの神秘スゲー(笑)。
  GM   で、さらに《恐怖の一言》を組み合わせてます。相手を強制的に移動させるエフェクトです。
  三雲   じゃあ、脚部のギアが、僕が命令した方向とは逆に回転を始めて。
  GM   そうそう、入口に向かっていく感じで。
  三雲   ちょっ、晴香さんッ、なんでっ!?
  GM   困った顔になる晴香を代弁するように、氷の蔦で相手を絡め捕る晴也が、
『ちょっと……こいつは……まずいんでなッ。いったん、おまえは下がれ! ここは俺たちでどうにかする!』
  三雲   そんな、だったらみんなで撤退すれば……!
  GM  『それを許してくれる相手じゃあなさそうだ……』
 晴也と晴香、二人がかりで抑えつけ、氷で拘束しているにも関わらず、帯電する身体は、徐々に《氷の戒め》を引きちぎろうとしている。
『それによ……おまえがいたら、全力が出せないんでな』
  ミカゲ  『俺のエフェクトが見られちまうわ』(一同笑)
  GM   先を見越しすぎ(笑)。
 三雲の身体はついに廃工場の入口を出た。
  三雲   くそっ、くそっ! と脚部に命令を飛ばすけど、晴香さんの上位権限で弾かれる。
  GM   『びき……びきッ……』と、廃工場全体が氷結し始める。入口も、分厚い氷の壁に封鎖されていく。
  三雲   もう《恐怖の一言》は解除されていいですよね? 入口にかけよって、氷の壁にパイルバンカーを撃ち込むんだけど……
  GM   氷の壁は砕けない。ばきばきと、扉のない入口を左右から塞いでいき――
 その隙間から、敵に組みついたまま、晴也と晴香が苦笑を交わし合うのが見える。
『悪いな。巻き込んじまって』『……いつものことでしょ?』
 そして次の瞬間、『がきんッ!』と、入口が完全に氷によって閉ざされた。
  三雲   晴也さんッ! 晴香さんッ!
 氷の壁を殴りまくるんですが、僕に仕込まれた疑似脳が、撤退してUGNに報告しろとがなり立てる。
  GM   戦闘用人格が起動。君自身の意志よりも、仕込まれた戦闘用アルゴリズムが上位権限を持って、身体を動かし始める。
  三雲   心は廃工場に向けられているんですが、身体が勝手に、UGN支部に向かって走り始めます。
 ちくしょう……! ちくしょぉおおッ……!
  GM   では、そこでいったん――幕が落ちます。
  三雲   心が折れそうだ……(笑)。
  GM   で、シーンはそのまま、舞台が変わります。
 君の意識はそこで途切れていて、次に目を覚ました時には、真白な部屋――UGNの医務室のベッドに寝かされている。
  三雲   意識が再起動したのを確認して、各部機能の確認を……
  GM   特に問題なさそうだ。全身の機能が修理・補給されている。
  三雲   では、勝手知ったる場所なので、外に出て……
  GM   すると、廊下で、20代後半の、一人の男と遭遇する。
 UGN白木町支部の支部長、影尾仁かげお・じん
『うん? 君は……“鉄杭ペネトレイター”だな。ようやく目覚めたのか。ちょうどいい頃合いだな』
  三雲   晴也さんと、晴香さんはッ!?
  GM  『ふむ。そうか、君はまだ知らないのだったな』
 うなずいて、ずかすかと医務室に入ると、窓をガラリと開ける。
 すると、8月であるはずの白木町が、一面の銀世界と化した光景が、目に飛び込んでくる。
  三雲   え……!?
  GM   雪がしんしんと、遠慮ないほどに降りしきり、地面には相当な量が積もっている。
 さらには、道端の人が、氷漬けになって彫像と化している。
  三雲   ちょッ!? 支部長、これは……!?
  GM   影尾は、切れ長の瞳で君を見つめる。
『わかりやすく言ってやろう。
 あの戦いで、荒井晴香は死に、西澤晴也はジャームと化した。これは、西澤晴也の力によるものだ……』
  三雲   そんな……。
  GM  『UGNは現在、全力を以て、西澤晴也の撃滅に当たっている』
  三雲   がくがくと、寒さではない理由から身体を震わせて。
 そんな……晴也さんがジャームになったなんて。そうだ、晴也さんが戦っていたジャームは?!
  GM  『そちらは死亡が確認された。おそらく、そのジャームを倒すためにレネゲイドウィルスの力を使いすぎて、晴也はジャームと化したのだろう』
  三雲   そんな……。嘘だ、信じたくない……。
 心は、へこたれて崩れ落ちて、涙を流してうずくまりたいんだけど……
  GM   冷徹な声音で、影尾が告げる。
『戌来三雲。君も、戦列に参加しろ』
  三雲   びくっとします。そんな……僕は……UGNに入ってからずっと、晴也さんと晴香さんにお世話になったのに……!
  GM  『だからこそだ。彼らの戦技を受け継いでいる君ならば、戦力として申し分ない』
  三雲   嫌だ……!
  GM  『……言い方を変えよう。
 ジャーム“西澤晴也”を抹殺せよ。――“鉄杭ペネトレイター”』
  三雲   コードネームで呼ばれた瞬間、ぎしり、と身体が強張り――
『了解……しました』
 疑似脳が身体を乗っ取り、そう返答します。
  GM   では、そこでシーンを切ります。



 貫くと決めた――泣かないと決めた。
 鋼鉄の意志を宿すため、鋼鉄の身体を手に入れた。
 だが今は――軋みがやまない。
 心の、身体の――涙に濡れて、錆びついたような軋みの音が。
 無情なまでに、ただ――やまない。



Opening.04 『厳然たる喪失サイレントリィ・ロスト

  GM   続いて、命都のオープニングです。
 兄が晴也に殺されたよ、という情報が入るシーンです。
 あるとき、凄まじい《ワーディング》が白木町全体を覆ったのを、君が感知するところから始まります。
  命都   では、UGN内で、例の戦いで負傷した人々の救護にあたっているところで、なんだろう、と周囲に目を向けます。
  GM   なるほど。では、君を含めたUGN職員たちが、オーヴァード化薬事件で負傷した人々の手当をしているんですが、
『おい、窓の外を見ろッ』
 誰かが叫び、そちらに視線をやると、なんと外は一面の銀世界。
  命都   氷の……能力? 負傷者の手当てをしながらつぶやいて、西澤晴也のことをちょっと心配します。
  GM   すると、『おい!』とUGN職員が、意識をあらぬ方へやった君の肩をつかむ。
『新しく回収されたガイシャだ。もう息はないが、状態を確認してやってくれ』
 担架から遺体を下ろしてくる。それは、あまりにも見知った姿。
  命都   喉もとで、『ひっ』という声を漏らします。
  GM   そこにあったのは、兄の変わり果てた姿だ。
 何かに相当苦しんだような苦悶の表情で、全身の毛細血管が破裂している。獣化の影響か、身体が中途半端に肥大化した状態だ。君でなければ、兄であるとは気づけないだろう。
  命都   口元を抑えたまま、へたりこみます。
  GM  『お、おい、大丈夫かっ?』
 慌てる職員。
『悪い、オレが無神経だったな……女の子に見せるもんじゃなかった』
  命都   その声で、ここがUGNの支部なんだということを強く意識します。
 はい……、すいません。あんまり慣れてないので……。がんばります。
  GM  『そうか……なら、すまんが、頼む。人手が足りないからな』
 さて、目の前にあるのは明らかに兄の遺体であり、兄がいつも愛用していた煙草も、箱ごと残っている。
  命都   人目をはばかりながら、それをそっと回収します。
  GM   そこで、兄と会った最後の光景が思い出されます。
 ファルスハーツに入って間もないころ、兄は売人チームのボディガードとして働くことになり、君はUGNへの潜入任務に就くことになった……ということを、FHの自室で聞かされているイメージ。
 まだ少年の面影を残した一真が、か弱げに微笑む。
『危険がないわけじゃないけど、おまえは要領がいいから、きっとうまくやれるよ』
  命都   でも、兄さんは……
  GM  『まあ、戦うとかは得意じゃないけど……キュマイラだからなんとかなる、って言われててさ。なんとかやってみるよ』
  命都   でも、もしかしたら、兄さんと戦うことになるかもしれないって考えると……、怖いよ……。
  GM  『大丈夫だよ』と、髪をかきまぜるように――晴香のように、頭を撫でる。
『スパイ活動っていうのは目立たないのが基本だろ? UGNにも、後方支援メインで入らせてもらえるって話だし……俺たちが殴り合うとか、そんなことにはならないさ』
  命都   うん……。
  GM  『じゃあ……』
 君の部屋を出て行こうとしながら、煙草を取り出し、火をつける。
 まだ未成年なんだけど、ストリートキッズだったこともあって、喫煙の習慣がある。
 ただ、火をつけようとする手が震えているのを、君は見る。本人は、見せないような角度にしているつもりらしいんだけど。
『そういうことだから……しっかりやれよ』
  命都   ちょっとせっぱつまったような声で、……兄さんっ。
  GM  『な……、なんだい?』
  命都   また、二人で暮らせるかな……とか、そんなことを言いかけたんだけど、言っちゃいけないと思って、『気をつけてね……』という言葉に、どうにか変えます。
  GM  『ああ……、おまえもな』
 弱々しくも、慈愛に満ちた言葉をかけて、一真は部屋を出て行った。
 それが、兄と交わした最後の会話。
 そして、再会が――今、目の前にある姿。
  命都   どうして……、どうしてこんなことに……。
  GM  『ん? ああ、死因についてか』
 近くにいた職員が反応する。
『そいつの死因は、西澤晴也のレネゲイド能力らしい』
  命都   はっ、と顔を上げます。……どういうことですか?
  GM  『そいつ、ファルスハーツのエージェントらしくてな。
 オーヴァード化薬を配っていたところに、西澤晴也が突入して、カタをつけたらしい。ほら、このへん、凍傷になってるだろ?』
 言いつつも、彼は困惑したように頭をかく。
『ただ……ちょっと前に、変な《ワーディング》の気配があって、外が雪に覆われただろ?
 さっき入った情報だと、そいつは、西澤がジャーム化したせいらしい』
 どうも、結構な時間、君は呆然としていたようだ。
  命都   晴也さんが……?
 それで――この支部はどう動くんですか?
  GM   ちょっと辛そうな顔をする。
『ジャームは、倒さなければならない。それが、日常を守るUGNの仕事だ。
 抹殺命令が下されるだろう……遠からずな』
  命都   そう……なりますよね。そう……ですよね……。
 変に、2回繰り返す。
  GM  『じゃあ、この遺体はもういいか? 慰安室に連れて行くぜ』
 一真の遺体を担架に乗せて、彼はその場を去って行く。
  命都   それを見届けてから、物陰に入って……少し、泣きます。
  GM   では、そこでシーンを切りましょう。



 瞳の奥で、火花が爆ぜる。
 名前も知れぬ衝動が、紫電を弾かせ、主張する。
 本当に、これでいいのだろうかと。
 流れに流され、ここにいて――本当に、これでいいのだろうかと。
 あるいは――あるいは、もっと早く。
 そのことに気づけていたなら――
 違ったのだろうか。



Opening.05 『幻影遥か、揺らめく先にミラージュ・オブ・ヌーン

  GM   最後はミカゲのオープニングです。
 ミカゲさんが庭石としての職務をまっとうしていると、あるとき街中に《ワーディング》が張られ、一面銀世界となってしまいます。
  ミカゲ   むう、何奴ッ!(一同笑)
  GM   UGN職員たちは、ずいぶんと慌ただしそうにしている。
 それを遠目に見ていると、
『……ミカゲ。ミカゲくん』という声が、不意に聞こえてきた。
  ミカゲ   なんだよ?
  GM   声には聞き覚えがある。君と同じくUGNに協力している、“J”という、電子プログラムのレネゲイドビーイングだ。
 人間を知りたいという欲求の中でも、ジャーム化した人間の精神に多大な興味を持っていて、研究データをもらう代わりに、UGNに協力している。
 電子プログラムという生まれのせいか、《ヒューマンズネイバー》で人間形態になれない変わり種。
 どうも、ハヌマーンの《彼方からの声》で、風に乗せて音声を送っているようだ。
  ミカゲ   お、“J”じゃん。
  GM   シンドロームがブラックドッグ/ハヌマーンで、本体が電子プログラムなので、普段は君が無理やりUGNに持たされている携帯電話に電波を送ってくるんだけど、なぜか今回は、ハヌマーンの風の力を利用して、声を送ってきている。
  ミカゲ   おや? 変だな。今日はケータイを忘れてないぞ?
  GM  『ちょっと事情があってね。今回は風の声で失礼させてもらう。一方通行になってしまうのが難点だがね』
  ミカゲ   異常事態かねえ、と、人間形態で雪の上に座り込む。
  GM  『UGN職員はてんやわんやだろうから、私から君に情報をやろう。
 君の親友の西澤晴也だがね。……彼は、ジャームと化したぞ』
  ミカゲ   (怪訝げに)……はァン?
  GM  『今、君は「……はァン?」という反応をしたことと思う』
  ミカゲ   (虚をつかれたように)むがっ、むぐぐっ……、し、してねーし!(一同笑)
  GM  『UGNによるFH掃討作戦の最中、まず新井晴香が死んだ。
 そして、力を使いすぎた西澤晴也が、ジャームと化した。
 現在のこの状況は、彼の《ワーディング》が白木町全体を覆っているためらしい』
  ミカゲ   これは、晴也が……。と、辺りを見回す。
  GM  『やがて、UGNから抹殺指令が下されるだろう。君もそれに参加してはどうかな? ジャームと化したものは討たねばならぬ、というのがUGNの掟だろう』
  ミカゲ   くそっ、何やってんだよ、晴也の奴っ。“J”、どこだーっ!?
  GM  『残念ながら、私は今、見動きが取れなくてね』
  ミカゲ   今の声が聞こえたかのような反応だな(笑)。
 では、ぴぽぱぽ、とケータイで連絡を……。
  GM   すると、ケータイが通じない。
  ミカゲ   むう? なんだこれ。ちくしょう! ぴぽぱぽぴぽぱぽ……!
  GM  君は今、話を聞いていないと思うが、まあ続けよう。(一同笑)
 親友が、自らの抹殺任務に参加したとき、ジャームがどのような反応を示すか……、私はそれが知りたい。情報の見返りとして、是非ともあとでレポートをまとめてくれ』
  ミカゲ   わかった、とよくわからないままうなずいて、晴也を探しに駆け出します。
 晴也ぁーっ、どこだぁーっ!
  GM   駆け出すと、町中が雪と氷に覆われており、通行人も氷の彫像と化しています。
 そこで、君はふと何者かの気配を感じ取る。
  ミカゲ   そこかぁーっ! と言って、隕石を投げつけます。
  一同   隕石をッ!?(笑)
  三雲   え、それ自分の一部?(笑)
  GM   投げつけると、その石は、現れた人影を通り抜けた。
  ミカゲ   通り抜ける?
  GM   半透明な姿でそこに立っているのは――荒井晴香。
  ミカゲ   晴香……!?
 えー、晴香に石を投げてしまったという事実に気づいて、恐れ震え上がります。
  GM   そこまでヒドいキャラではないはずだ!(笑)
 晴香は、切なげな眼差しで君を見ている。何かを言おうとして、言えないような……もどかしげな表情で、ただゆっくりと頭を振る。その身体が、徐々に消え失せていく。
  ミカゲ   晴香!? 死んじまったのかと思ったぜ! と駆け寄ります。
  GM   駆け寄る頃には、彼女の姿は薄れ、消えている。ただ、何かを伝えたい、という思いがあったことだけが、レネゲイドウィルスを通して、あなたにはわかります。
 幻覚物質を操るソラリス・シンドロームのエフェクト、《声なき声》による幻覚伝達物質を使って、自らの思念を飛ばしました。
  ミカゲ   くそっ、どいつもこいつも、わけわかんねえよっ。誰が何を知ってるんだ!?
  GM   すると、UGN支部の方から声が聞こえます。
『西澤晴也の居場所が特定できたぞッ! 討伐隊員は集合しろーっ!』
  ミカゲ   では、それを聞いて、そっちに駆け出します。
  GM   了解。そこでシーンを切って、オープニングが終了。
 次から、ミドルフェイズに入ります。



 宇宙は広く、地球は狭い。
 人は、猫の額のような見識だけで、訳知り顔に物事を話し、愚かさを露呈する。
 まったく、宇宙の広さに比べれば、人の知識など瑣末なものだ。
 だが――想いはどうか。
 熱く脈打ち鼓動を揺らす、人の内なる想いはどうか。
 あるいはそれなら、広大なる宇宙すら、動かすほどの力を持ちはしないか。
 答えは知れず――ただ、少なくとも。
 確かなことには、熱火をまとう石ころひとつ――想いに応え、駆け出していた。




 次回へ続く