ゲヘナ〜アナスタシス〜リプレイ
The Obedient Blade



『ゲヘナ〜アナスタシス〜』の世界



 『ジャハンナム』と呼ばれる世界があります。

 そこは、かつては地上に栄えた国でしたが、『妖霊』の仕業によって国ごと地獄に堕ちてしまい、魔物が跳梁跋扈する砂漠の世界と化してしまいました。
 『ゲヘナ〜アナスタシス〜』の舞台となるのは、そんな地です。人々は、時に『邪霊』の知恵を借りつつも、たくましく生きています。そのなかで、死者の魂を操る『魂操術』や、癒しと破壊の炎を操る『炎術』など、様々な術技が発達していきました。
 なかでも――、<頽廃の果実酒(ザクムのエキス)>と呼ばれる、特殊な酒を呑むことで“力”を得た者たち――大半は死んでしまいますが――すなわち<享受者>たちは、常人の数倍もの力を持っています。
 そして、享受者は裏社会の組織である紫杯連(マーリク)に属し、組の利益とメンツのために、日夜、仕事に励んでいるのです。

 そんなわけで、今回は、ダーク・アラビアン・ファンタジーRPG『ゲヘナ〜アナスタシス〜』のリプレイです。なお、ルールブック発売後、まだ間もない頃、サークルの後輩が『とりあえずゲヘナで遊んでみよう的なシナリオ』のGMをやってくれたセッションを元にしています。





1.享受者たち


  GM   この世界には、ヤクザな組織(紫杯連)が4つあってですね、今回の舞台となる瓦礫の都シェオールでは、いちばん大きい界螺、知性派の鐘杏(しょうきょう)、武闘派の凌渦、悪い人たちが集まる架唇(けしん)が、勢力的に入り乱れ気味です。
  プレイヤーD   入り乱れ気味ですか。
  GM   実にケイオスです。冒険してくださいと言わんばかりです。
  プレイヤーD   なるほど(笑)。
  GM :  そんな街で、あなたがたは<頽廃の果実酒>を呑んで、めでたく享受者になりました。
 やったね♪ 隣で呑んでたヤツは死んだよ♪(一同笑)
  プレイヤーA :  訓練しても、呑んだ人の半分くらいしか生き残らないからなあ。
  GM :  あなたたちは界螺の享受者ということで。界螺としても享受者が増えることは喜ばしい限りなんで、歓迎会と称して、飲みが行われます。知り合うのも兼ねて、ここでキャラクター紹介をしてください。
  プレイヤーA :  学生、ちゅうもーく!
  GM :  学生じゃねえよ。誰だよ52歳とか言ってるのは。(一同笑)
  プレイヤーB :  はっはっは。(※ PCが52歳という設定) いやでも、ウチの大学、56歳の新入生とかいたけどね(笑)。
  プレイヤーA :  では、私から。名前は“ファリド”と申します。種族は人間で、20歳です。筋力的には獣人にも匹敵しますが。
 出来ることは“殴る”と“忍び寄る”。まあ、忍び寄って殴ります。
  GM :  要するに“いやらしいヤツ”だな。(一同笑)
  ファリド( ) :  術技は、愧拳術(きけんじゅつ)が2レベル、《暗殺術》が1レベルですね。


  《愧拳術》は、素手を頼りに敵を撲殺する格闘術。
  《暗殺術》は、《魔薬》をキメてスペックを向上させ、連続攻撃を叩きこむ技です。

  ファリド :  薬を飲んで筋力がムキムキになって、『たった3日間でこんなに!』って感じになります。
  プレイヤーD :  まったく簡単だ(笑)。
  ファリド :  ちなみに《信条》はですね、<頽廃の果実酒>の半分は《邪霊》で出来ているということで(笑)、《邪霊:肯定的》。あと、知力が1なんで《知識:否定的》。
  GM :  では、次の方。
  プレイヤーB :  キャラクター名は“サマド・キア”。草食獣の獣人です。
  GM :  草食獣ですか。種類は?
  サマド :  じゃあ、ゼブラーマンで。(一同笑) でも、《獣甲闘士》なので、《剣腕》が生えてます(笑)。壁にはなりますが、あまり攻撃は期待しないでください。
  ファリド :  あ、オレにも攻撃は期待しないでください。
  GM :  前衛ってどこだ?(一同笑) ――ボスは前衛だよ。(一同爆笑)
  ファリド :  ちなみに年齢は52歳。信条は、《運命:肯定的》、《欲望:否定的》です。


  《獣甲術》は、《獣甲》と呼ばれる特別な獣の身体の一部を肉体に移植して、様々な効果を発揮する術技です。
  また、サマドのように、この世界には《獣人》なる種族が存在します。外見は、二足歩行(人型)になった獣、という感じで、低いとはいえ人間並みの知性と、野性の感覚を持ち合わせています。

  GM :  では、次。
  プレイヤーC :  ウィ。キャラクター名は“ハッサ・ガッサ”。種族は天使で、37歳。《炎術》と《妖霊術》を使える。使役している《妖霊(ジン)》は、“バネッサ”という名前で、女性。
  プレイヤーD :  女性かー。どんなタイプの?
  ハッサ・ガッサ :  えー、『大人っぽく妖艶で、落ち着いているがおっとり』
  ファリド :  包容力のある、お姉さんタイプですな。
  プレイヤーD :  抱擁力と言うと、『ぎゅう〜〜、ばきばきばきッ』みたいな?
  GM :  それは単なるベア・ハッグだ。
  ハッサ・ガッサ :  《炎術》で回復と攻撃ができて、《妖霊》でみんなの援護ができます。
 信条は、《平和:肯定的》《邪霊:否定的》です。


  《炎術》は、敵を焼き焦がす灼熱の《黒炎》と、傷口を焼き塞ぐ癒しの《白炎》を操る魔術。
  《妖霊術》は、《妖霊》と呼ばれる魔物を自在に使役して、時に味方の援護を行う魔術です。
  そして、《天使》とは、背中に純白の翼を生やした、清く正しい種族です。


  GM :  それでは、最後。
  プレイヤーD :  はいはい。キャラクター名は、“カンダタ”改め“マルマル”
  GM :  大理石ですね。


  『ゲヘナ〜アナスタシス〜』ルールブックには、アラビアンな名づけ表が付属されています。『マルマル』はそこに載っており、『大理石』を意味するわけです。

  マルマル :  年齢は15歳で、性別は女性。種族は《銀糸の民》で、銀髪なんですけど、赤いほっかむりをしています。
  GM :  ホタルすぐ死んでまうやん。(一同笑)
  マルマル :  で――享受者なんだけど、あんまりよく事情が飲み込めてない感じ。私、どーして、こんなところにいるんだろう。
  GM :  なんでエキス呑んでんだ、あんた。
  マルマル :  いや、街角でマッチを売ってたら、界螺の人にスカウトされまして。
 もともとはみなしごで、マッチを売ってたんですが、『食べ物が欲しいな〜』って思ってマッチをすると、ホントに食べ物が出てくるという……《幻鏡術》の才能があったのです。
  サマド :  で、魔術の強制力が低いと、その辺にモンスターがわらわらと出てくる(笑)。
  GM :  『おまえ、ちゃんと術を扱えるようになれッ! このエキス、呑めッ!!』(一同笑)
  マルマル :  そんな感じで享受者になりました。
 信条は、《栄光:否定》。だって、みなしごだから。《暴力:否定》。だって、華奢いから。
 でも、襲われたりしたら、マッチをすって『足長おじさ〜ん!』と叫んで、ナタを持ったおじさんの幻像を召喚します。
  ファリド :  あなた、幻鏡使いをなんだと思ってるんですか。
  マルマル :  マッチ売りの少女。
  GM :  や、マッチ売りの少女は、足長おじさんを出したりはせんと思いますが……。


  《幻鏡術》は、特殊なランタンの炎によって発生した蜃気楼を現実に変える魔術です。魔術判定の強制力により、効果が変わるので、たとえばマルマルが習得している【長期生存式、糧秣】の判定に失敗すると、モンスターが出てくるわけなのです。
  なお、《銀糸の民》は魔術に長けた華奢な一族で、銀髪が特徴です。


  GM :  では、そういう感じで呑んでるとですね。やや危なげな様子で、女の子が料理を運んできますね。 
  マルマル :  ほほう。
  GM :  その女の子は、なぜか犬を連れて歩いてまして――、軽くテーブルにぶつかってから、『ああ、すいません』って追加の料理を卓に並べたり。よく見ると、目をつぶったままです。
  ファリド :  ああ、目が見えないんだな。
  マルマル :  うーん、なんて怪しい柴犬。
  GM :  犬の方を観察したあなたは、なんか適当に【感覚】で振れ。(一同笑)
  サマド :  GMが適当だ(笑)。
  マルマル :  おお、【感覚】! 能力値のひとつ、【感覚】! それなら得意分野ですよー、最高値の5点ですよー。
 (ころころ)達成数は4ッ!


  『ゲヘナ〜アナスタシス〜』の判定は、ちょっと変わっています。
  指定された【能力値】の数だけ6面体を振り、基準値(通常は4)以上の目が出たダイスの数が、成功の度合い――達成数となるのです。
  攻撃を行う場合は、この達成数が【命中値】となり、魔術を使う場合は、達成数が【強制力】となります。

  GM :  ああ、なら気づきます。犬の両耳にはですね、形は違えど、どちらにもイヤリングがついています。
 女の子は去っていきますけど、特にすることはないですか?
  サマド :  キャベツください。(一同笑)
  マルマル :  ああ、知らない人に食べ物を恵んでもらえるなんて、久しぶりです。何かお返しをしなくてはっ。
 てなわけで、《幻鏡術》の【長期生存式、糧秣】を使用します。
 (ころころ)達成数は3。なんと、10人分の食べ物が出てきましたよ!
  ファリド :  (《幻鏡術》の効果欄を読んで)……全部、腐ってるけどな。
  GM :  10人分の腐った食糧が、『ももももも』と(笑)。
  マルマル :  お礼です! 食べてください!(笑)
  ファリド :  食えるかそんなもんッ!
  ハッサ・ガッサ :  この海原雄山を侮辱する気かッ!!(一同爆笑)
  サマド :  このあらいを作ったのは誰だッ!!(一同爆笑)
  GM :  えー……何回か女の子が料理を運んでくるので、彼女の耳にも、犬の耳についているのと同じイヤリングがあることに気づきますね。
  マルマル :  鑑定してみてもいいですか?
  GM( ) :  《魔術知識》技能で振ってねー。なければただの【知力】判定。――成功ですか? じゃあ、魔具の<危那(あぶな)>と<傷那(きずな)>だと分かります。どちらも一対のイヤリングで、別々の人がつけると、それぞれ互いの感情と、生命の危機を察知できます。
  マルマル :  は〜、あの犬さんが、女の子のサポートをしているんですねぇ。
  GM :  そういえば、犬の名前を決めてなかった。ラシードということで。
 では、宴のシーンはフェードアウト。気がつくと、界螺の支部長の前にいます。(一同笑)
  マルマル :  あれっ!? いつの間にっ!?
  ファリド :  さっきまで、オレたち、呑んでなかったか!?
  GM :  それは気のせいです。呑み会は、もう3日前に終わりました。
 あなたがたは、いま、支部長に呼ばれて、部屋の前にいるところです。
  ファリド :  入りまーす。
  ハッサ・ガッサ :  失礼します。
  GM :  部屋の中では、青い翼を持った初老の《堕天使》が待っている。名前は“サリフィエル”


  《堕天使》は、天使と同じく翼を持った種族ですが、神への信仰心を失っています。
  まあ、別に、だからどうだというわけではないため、PCとして選択することも可能です。

  GM :  『君たちが界螺に入って、もう3日だ。そろそろ仕事をしてもらわねばならん。
  本来なら、こういう仕事に、君たちのような新米を駆り出すのは珍しいことなのだが――』
  ハッサ・ガッサ :  ちょっと待った! 《ジン》がまだ遅刻して来ていない。話はそれからだ。
  GM :  『では君は仕事を請けなくてもいいかね?
  ていうか、《ジン》が聞く必要ねーじゃねーか。てめえが話せ!
  マルマル :  ああっ、支部長がキレやすい!(笑)
  GM :  それは中の人の影響です。(一同笑)
  ファリド :  それで、どういう仕事なんですか、支部長。
  GM :  『昨日の夜、ウチの魔具――といえば聞こえはいいんだが、ちょっと危険なものを管理している蔵が襲撃されてしまってだな』
  ファリド :  それは良くないですね。
  GM :  『魔具がひとつだけ、奪われてしまったのだ。
  《幻鏡術》を、才能のない人でも高い安定度で使えるようにする、というものでな』
  マルマル :  というと巨大なマッチとかですか。
  GM :  『マッチというか、巨大な焚き火、と言った方が近い。儀式的なアイテムでな。ヒトを燃料にする』
  サマド :  人間を燃やす、か。
  GM :  『そうすると、まあ、金とかがポーンと出せたりするわけだが……』
  ファリド :  使わないでくださいよ、そんなもん!
  GM :  『使わない! 使ってないよ!』
  マルマル :  ムキになって否定するところが怪しいです!
  GM :  『使ってないってばぁ! まだ1回も使ってないんだからね!』
  ハッサ・ガッサ :  ツンデレだ!(笑)
  GM :  もともと……袈唇という悪い組織が偶然に作っちゃって、『これ凄いんじゃね?』って使ったら、界螺の縄張りからヒトがスポーンと飛んでいって、『ああ〜』以下略、という出来事があったわけで。
 縄張りを荒らされるのもなんなので、一度、その儀式呪文を使っていたところに乗り込んで魔具を回収し、管理していたと。
  ファリド :  いや、壊そうよ。
  マルマル :  きっと魔法の力で壊れないんですよ! ね、支部長さん?
  GM :  『え?』(一同爆笑)
  マルマル :  ……え?(笑)
  GM :  『いや、ほら……、困ったときとかね?』(一同爆笑)
  ハッサ・ガッサ :  崇高な犠牲ってヤツですか。
  GM :  『まあ、いざというときゲフンゲフン』(一同笑)
  ファリド :  で、それが奪われてしまったわけですね。
  GM :  『そうだ。放っておけばメンツに関わる。それを探してほしい、ということもあるのだが……
  加えて、ウチの支部で働いている、目の見えない女の子を知っているか』
  ハッサ・ガッサ :  ……ラシード?
  マルマル :  それは犬。
  GM :  女の子の名前は“ミナー”だそうです。
『ウチの給仕として働いてくれているのだが……昨日から消息を断っていてな』
 1人でアパートに住んでいるらしいんですけど、近所の人が言うには、昨日の夜から家に帰っていないそうで。
  ハッサ・ガッサ :  なんということだ。
  GM :  『もしかすると誘拐されているのかもしれん。あまり優先度は高くないが、探してやってくれ。
  探してくれると、わし喜ぶよ。』(一同笑)
  マルマル :  なんで支部長が?(笑)
  GM :  『組のメンツのためだ』 支部で働いている子が誘拐されるなんて、そんな情けない、と。
  ファリド :  ああ、別に、『かわいそうだから』みたいな理由じゃないわけね。
  マルマル :  おじいさま……シェオールは怖いところです(笑)。
  GM :  『あまりにも人手が足りない状況なので、君たちにもこういった仕事を頼むことになったが――よろしく頼む』
  ファリド :  ああー……聞きにくいんですが……お給金は?
  GM :  忘れてました。すいません。
 『(ふてくされたように) 忘れてましたぁ〜! すいませんん〜!
  マルマル :  ああっ、支部長が逆ギレた!(笑)
  ハッサ・ガッサ :  ミナーを見つけた場合の報酬ってのはあるんでしょうか?
  GM :  『……別にぃ?』(一同笑)
  サマド :  『探してくれれば褒めてやるよ』くらいか(笑)。
  GM :  『ああ、そうそう。蔵の管理をしていた、“ハキム”という、一般人の虎獣人の居場所を教えておこう。話を聞いてみるのもいいだろう』
  ファリド :  わかりました。ありがとうございます。
  ハッサ・ガッサ :  では、ハードボイルドに捜査を開始するか。
  マルマル :  ま、やるだけやってみましょう。
  GM :  『うむ、頼んだぞ』


  と、いうわけで、仕事が始まったのでした。


 続く。