Necromantica


“クライムブレイカー”



Preplay.


  GM   ではネクロマンティカのセッションを始めます!
  一同   はーい!



 数人が同じテーブルに着き、紙や筆記具やトランプや飲み物を広げているという、この光景。
 実は、これからゲームを始めるところなのです。

 その名は、『テーブルトーク・ロールプレイング・ゲーム』。  遊び方が書かれたルールブックを元に、「ゲームマスター(GM)」が作ったシナリオを、「プレイヤー」が作った「プレイヤー・キャラクター(PC)」で遊ぶ――
 という、たいへん変わったゲームです。

 そしてこれは、「リプレイ」と呼ばれる新感覚文芸媒体。
 テーブルトークRPGのプレイ風景を録音し、さらに編集して作成された読み物です。

 テーブルトークRPGの遊び方は、実際に遊んで見ないとなかなかよくわからないものですが、リプレイは、このゲームの雰囲気を、おおよそ察する手助けとなるのです。


 ちなみに、今回ここで遊んでいる『ネクロマンティカ』というゲームは、一部の有志が勝手に盛り上がって作っちゃったオリジナルであり、一切販売されていないものなので、ご注意ください。



  GM   この『ネクロマンティカ』というのは、ゾンビーやスケルトンなどのアンデッドになって遊ぶゲームです。
  プレイヤーB   では、とりあえずスーパーマーケットに行って人生を謳歌します(笑)。
  GM   残念ながら、舞台は古代ギリシャ・ローマ風の都市国家群なので、君の想像しているようなスーパーマーケットはありません(笑)。
 この世界では、唯一神シオルが信仰されています。この人が世界を作った神様です。
 しかしシオル、世界を作った後になってから、死者の魂の行き場がないことに気づいて『やべッ』と言います。
 今さら作り直すわけにもいかないので、しょうがなく、自分が冥府になって、死者の魂を受け入れるようになりました。
  プレイヤーC   心が広い。
 GM   で、受け入れた死者の魂を、冥府の黒い炎“インフェルノ”で焼いて、記憶を消します。
 そうして綺麗になったところで現世にトスする、そんな輪廻転生システム。
 ところが、インフェルノで焼かれてる最中に、『俺まだ未練があるから帰るー!』と言って現世に戻っちゃう輩がおりまして。
 インフェルノを引きちぎって現世に戻るので、神の力であるインフェルノを動力源にして、動く屍ゾンビーや、幽霊ゴーストなどになる。
 君たちには、そういうアンデッドか、もしくは何らかの事情でインフェルノを使えるようになった人間とかをやってもらいます。
  プレイヤーB   クルスニクっていう人間は、現世の未練を引きずったまま転生したからインフェルノが使えるんですよね。
 つまりシオルが仕事してくれなかったんですね(笑)。
  GM   こびりついた汚れがなかなか落ちないから、『もういいや』と。
  プレイヤーB   ヒドい(笑)。そこでトスしないで!(笑)
  GM   という感じの世界で、死んでなお果たすべき『未練』を解消するためにがんばってもらいます。
 ただ、アンデッドってのはいちゃいけない存在なわけで。
 シオル信仰的には、『あるべきでない存在』として人々から石を投げられます。
 それに、インフェルノを使えば使うほど記憶が焼かれていき、やがてはすべてを失って人を襲う悪霊、ラルヴァになってしまうこともある。
 まあ、そこは設定的な問題なので、ゲーム的にいきなり記憶が飛んだりは、あまり、しない。
  プレイヤーC  『あれ? 僕、前のシナリオでヒロインになんて言ったっけ?』
  プレイヤーA   それはプレイヤーの記憶が飛んでる(笑)。
  GM   ということで、君たちには、人々から恐れられ排斥され、『おまえなんかとっとと死ねよ!』と言われながらも未練を果たすためにがんばってもらいます。
 不遇の存在ですが、そんな逆境でもがんばる、というカタルシスが狙い。
  プレイヤーC   ふぐぅー。……ふぐ食べたい。
  GM   知るかァー!(笑)
 えー……、では、今回のシナリオの傾向を説明する『今回予告』があるので、まずはそいつを読み上げようと思います。



清浄都市プルガトリア――
不浄を許さぬその土地を舞台に、今、復讐の車輪が回り出す。
主を奪われた剣士が、不死の怪物と化して暗躍し、
鎧まとう赤い瞳の騎士が、自らもまた狙われながらも、ラルヴァと戦い続ける。
だがそれは、密やかに張り巡らされた計略の糸の上で踊り続ける道化に過ぎない――。

“クライムブレイカー”

失える記憶の果てに、どんな願いがあったのか。



  GM   この世界では、“パクス”と呼ばれる都市国家ごとに様々な特徴があって、ぶっちゃけGMがシナリオの都合で好きなパクスを作っていいことになってます。
 今回は、清浄都市プルガトリアという、他のパクスと比べても特にアンデッドを許さない都市を舞台にしました。
  プレイヤーC   なぜ(笑)。
  GM   逆境感が出て面白いから(笑)。
  プレイヤーB   じゃあ、PCは人間だけでやりましょうか(笑)。
 被憑依者ポゼッスド前世記憶者クルスニク死者混血ダンピールで。
  プレイヤーC   ダンピールはダメなんじゃね?
  GM   そうだねえ……。ダンピールはダメですね。
 プルガトリアは、特にシオル信仰の神殿の力が強くって、アンデッドの存在を許していません。
 前世の記憶を持ち、生来インフェルノを操れるクルスニクと、死者に憑依され、インフェルノを操れるポゼッスドはOK。むしろ、対アンデッド要員として、神殿騎士などに抜擢されます。ポゼッスドの場合、『自力で死者を憑依させてる』イタコさんみたいなタイプに限定されるけど。
 対してダンピールは、ヴァンパイアなどの生殖可能なアンデッドと人間との間に生まれたハーフで、それゆえにインフェルノが使えるんだけど……プルガトリア的には『不浄』と見なされ、排除対象になります。
 ダンピールは『アンデッドである親の記憶を持つ』という特性があるので、他のパクスではアンデッド・ハンターとして活躍してるんだけど、プルガトリアでは存在そのものが許されない。
 では、PCのハンドアウトを配ります。基本的には、ハンドアウトに沿ってくれていれば、他の設定は好きに決めていいです。



PC1用ハンドアウト

因縁記憶:【敵意】 対象:【アルド】

タイプ:アンデッド限定

死の記憶
 あなたは、女貴族マルシア・ムーナティウスに仕える奴隷であり、剣士だった。
 同じ奴隷剣士アルドとともに、「ムーナティウスの双剣」と称されていたあなただったが、マルシアを守れず、命を落とした。
 そのときの詳細は思い出せない。
 ただ、アルドと剣を交えたことだけは、確かだった。

現在
 マルシアの仇を討つという未練からアンデッドとなったあなたは、死者の集う酒場〈ロクス・ソルス〉に身を置いていた。
 そこの主人、〈ソロレス〉によれば、この清浄都市プルガトリアに冥気が集まり、インフェルヌス化しようとしているらしい。
 そんな折、あなたはひとつの気配を感じた。鋭すぎる剣気――それは、アルドのものだった。

未練:マルシアの仇を討つ



  GM   という感じで、『ネクロマンティカ』のハンドアウトは、死んだときの状況である『死の記憶』、シナリオへの導入となる『現在』、それからキャラクターの当面の目的である『未練』が記載されています。
 このPC1は、女貴族マルシアに仕える奴隷剣士なんだけど、マルシアともども命を落とし、アンデッドになって彼女の仇を討とうとしているキャラです。
  プレイヤーC   はいはい。冥気っていうのは?
  GM   冥気はひらたく言うと死者の念です。たいていは怨念。
 これが集まりすぎるとアンデッドが生まれやすくなり、ひどい時には、インフェルノに満ちたアンデッドのたまり場である“インフェルヌス”が発生してしまう。
  プレイヤーB   〈ロクス・ソルス〉もインフェルヌスなんですかね?
  GM   いや、そこは違う。〈ロクス・ソルス〉は、シオルがアンデッド・ハンターとして抜擢し、死神として転生した死者である“グリム・リーパー”が経営する酒場なので安全です。
 ただ、インフェルヌスの方は、シオルも予想外の現象なので、ちょっとヤバい。
 ではPC2の説明です。



PC2用ハンドアウト

因縁記憶:【(任意)】 対象:【スピカ】

タイプ:ゴースト、もしくはポゼッスド

死の記憶
 あなたは、清浄都市プルがトリアの元老院議員として働いていた。
 今となっては思い出せないが、元老院が進めていた“ある計画”に反対する立場だった。
 そんな折、あなたは赤い鎧のアンデッドに家族もろとも皆殺しにされた――。

現在
 気がつけば、あなたは1人の少女、スピカに憑依していた。
 なぜかはわからない。ただ、未練があることは確かだ。家族の仇を討つ、という未練が。

未練:家族の仇を討つ



  プレイヤーB   これ、ポゼッスドのキャラにした場合、憑依先であるスピカがPC(プレイヤー・キャラ)になりますか?
  GM   いや、その場合、『スピカに憑依しているゴースト』をPCとしてロールプレイしてもらいます。ポゼッスドは「霊魂に憑依された人間」なので、キャラクターのデータとしては、『スピカ』のものだという扱いになるんだけど。
 スピカはNPC(ノン・プレイヤー・キャラ)なので、基本的にはPCの意に反した動きはしません。スピカが何かしたがるときは、GMからプレイヤーにまず相談します。憑依者である以上、スピカのそばを離れられないので。
 なお、元老院議員はお偉いさんです。パクスの最高意思決定機関が元老院で、その5人の中の1人ということになります。
  プレイヤーC   おお。すごいじゃないですか。
  GM   元老院は、通常の貴族が3人と、市民に選ばれた護民官2人からなります。PC2は、貴族でもいいし護民官でもいい。
 では、最後にPC3。



PC3用ハンドアウト

因縁記憶:【好意】 対象:【エレクトラ】

タイプ:ポゼッスド、もしくはクルスニク

死の記憶
 あなたは、一切の不浄を許さぬ清浄都市プルガトリアの神殿騎士だ。
 生来インフェルノを扱えるため、アンデッド討伐のエリートとして、あなたは活躍してきた。
 そのあなたを最近悩ませているのが、魔人レッドアイの暗躍だった。

現在
 懇意にしていた女貴族マルシアが、反逆罪で処罰された。
 そんなはずはないと思いながらも、あなたにはどうすることもできない。
 ただ、残された娘であるエレクトラを慰めてやることだけしか。

未練:レッドアイを倒す



  GM   というわけで、設定的には唯一の人間です。「死の記憶」があるのは、まあ便宜上の表記。
 神殿騎士は、シオル信仰の神殿に仕える戦士で、対アンデッドのエリートです。クルスニクやポゼッスドのような、インフェルノを使える人間は、だいたい神殿騎士に勧誘される。インフェルノが使えないと、なかなか強力なアンデッドに対抗できないので。
 では、ハンドアウトが出そろったので、好きなものを選んでもらいましょうか。
  プレイヤーA   ここはなんでもいいけど……。
  プレイヤーB   PC1かPC2かなあ。



 ハンドアウトを選択し、さらにアンデッドとしてのタイプを選んでいくプレイヤー一同。
 その後は、ルールに従って、着々とキャラクターのデータを作りつつ、設定を深めていきます。



  GM   ではキャラクターができたところで、説明をお願いします。
  プレイヤーA   はい。名前は『ラスフェーン』です。タイプはスケルトンで、24歳のお姉さん。
 やや色素薄めな髪を長めに伸ばしていて、大剣マグヌム・フェルムをぶんぶん振ってました。
 性格は【律儀】で【求道者】で【享楽の徒】なので、『戦うの大好きー!』という感じです。
 死んでからの格好は、赤い外套と、鍔つきの帽子をかぶっています。
 【過去】に対する【庇護】という根源記憶を持つので、マルシアの奴隷剣士は楽しんでやってたんでしょう。
 戦闘方法は重い一刀で両断。自力で回復することもできます。
  GM   骨太なスケルトンですね(笑)。
  ラスフェーン   あと、アーク・スキルは選んでません。
  GM   なるほど。アーク・スキルは強力な能力だけど、取得しないならそれはそれでメリットもあるので、まあ大丈夫か。
 では、次の人。
  プレイヤーB   ポゼッスドの『マルガリータ』です。
 ちょっと高名だった護民官の1人で、そこそこ人望もあったとは思う。年齢は34歳くらい。
 正義感が強い人なので、反対してた案件は悪いものであると信じています(笑)。
  GM   了解。では最後の人。
  プレイヤーC   はいはい。名前は『ヒエムス』。クルスニクの神殿騎士で、やや面長な20代前半の若者です。
 タレントが【生真面目】【赤貧】【愛】。もともとプルガトリアの下町出身だったんだけど、クルスニクであるってことで目をつけられ、マルシアさんに重用していただき、今では神殿騎士として働く毎日であります。
 たぶん、奴隷剣士だったラスフェーンとも知り合いだったと思う。
  マルガリータ   全員、知り合いでもおかしくないよね。
  ヒエムス   で、最近、赤い鎧の魔人レッドアイとかが出てきたので、どうしようかと。
 いつもはガッチガチに鎧を着込んでますが、〈獣身変化〉で白いオオカミになれます。
 あと、[クロッシング・アサルト]っていうスキルを5LVで取ったので、他人をアシストするのが得意です。
  GM   了解。ではまず、メモリアル・フェイズから行きましょうか。



Memorial Scene.01 『ムーナティウスの双剣ツイン・フェンサー


  GM   まずはラスフェーンから。マルシアと君とアルドが、家に帰ろうとして暗い路地裏を歩いているシーンです。
 長身で、長い銀髪をなびかせる、切れ長の眼をした女――マルシア・ムーナティウス。
 彼女の前後を挟むようにして、君と、長身痩躯の黒髪の男アルドが護衛している。
  ラスフェーン   ともすると鼻歌でも歌いそうな感じで歩いてますが、目つきは鋭く、こまめに辺りを睥睨へいげいしてます。
  GM   では君は、上から何者かが飛びかかってくる気配を察する。
 マルシアの頭上に、ぎらりと輝く凶器の刃――。
  ラスフェーン   大剣で撃ち払います。
  GM   君の放った一刀が相手のナイフを折り砕き、同時にアルドの長剣が暗殺者の心臓を貫いている。
  ラスフェーン   まったく、油断も隙もありゃしない。お怪我はございませんか??
  GM  『ああ』と、動じた様子もなく答える。『いつもながら、見事な腕だ』
  ラスフェーン   お褒めにあずかり、光栄です。と、大げさなお辞儀をする。
  GM   それを見て、マルシアはにやりとして肩をすくめる。
『どうやら、ただの警告――あるいは威嚇だったようだな。では行くか』
  ラスフェーン   敵、多いの? この人。
  GM   さばさば物を言うので反感を買いやすい。敵も多いが味方も多いというタイプ。
 そんな感じで家に帰る君たちです。すると盲目の少女が出迎えてくれ、マルシアがちょっと表情を和らげる。
『遅くなった。エレクトラ』
『ううん、お帰りなさい、お母さん。ラスフェーンとアルドも』
 溌剌と言う。
  ラスフェーン   ただいま〜。
  GM   アルドは無言でうなずくのみ。エレクトラは、あれ? と首をかしげる。
『なんだか血の匂いがする』
  ラスフェーン   えーと、それは……。
  GM  『先ほど暗殺者に狙われてな。彼らのおかげで大事なかった』
『そうなんだ。ありがとう、ラスフェーン、アルド』
  ラスフェーン   慣れすぎてるよこの家族!(笑)
 まあ、お勤めですんで。
  GM  『俺は剣だ』とアルドが言う。『主の望むままに振るわれるのは当然のことだ』
  ラスフェーン   相変わらず、重ったい考え方だなぁ。
  GM  『おまえが軽すぎるだけだ』そっけなく答えるアルド。そんないつもの光景を見て、マルシアはにやりとする。
『さすがは〈ムーナティウスの双剣〉というところだな。いや、私がつけたんだが』(一同笑)
  ラスフェーン   それ……、恥ずかしいんでやめません?(笑)
  GM  『何か言ったか、〈ムーナティウスの双剣〉?』(一同笑)
  マルガリータ   私も面白がってそう呼んでそうだ(笑)。
  GM  『そうそう、おまえたちのために、こんなものを用意させた』
 初老の召し使いが、二つの包みを抱えて現れる。
『どうぞ。〈ムーナティウスの双剣〉でございます』
  ラスフェーン   ええー!?(笑)
  GM   片方はバカでかい剣で、片方は片手持ちの長剣。
『双剣と言うには少々いびつだが、まあ気にすることはない。名匠ガストンの手になる逸品だ。受け取れ』
  ラスフェーン   ではありがたく、と長剣の方を(笑)。
  GM   アルドが物言いたげな視線で見ている(笑)。
 そんな日常の光景も薄れ――続いて、死に際の記憶が再生される。
 倒れたマルシア。その前で立ち会っているのは、君と、剣を手に提げたアルド。
 場所は闘技場の真ん中。アルドは、いつもと変わりない、いかめしい面持ちで君に剣を構える。
  ラスフェーン   肩で息をしながら、怒りをあらわにして剣を構えています。
  GM   君に思い出せるのは、どちらも主を守ろうとしていたはずだ、ということだけ。
『おまえの方法では……真に主を救えるとは言えぬ』
  ラスフェーン   そんなこと、おまえに言われたかぁないね――。
  GM  『ならば――おまえをへし折り、孤剣となろう』
  ラスフェーン   舌打ちする。双剣が互いに撃ち合うか……、冗談にもならねぇな。
  GM   静かに足を進めて、アルドは撃ちかかってくる。
  ラスフェーン   こちらも静かに走り出します。
  GM   では、互いの銀光が交錯した――というところで、思い出のシーンを切りましょう。



 誇りのままに剣を振る――そのために生きてきた。
 しかし、剣は折られた。誇りは穢され、命は踏みにじられ、魂は漆黒の炎に焼き尽くされた。
 冗談ではない、と思う意識がある。
 誇りにかけて。命にかけて。この魂にかけて、このまま終わることなどできようはずもないのだ、と。
 冥府の神の抱擁すらも引きちぎる、猛々しくも獰猛にして凄烈なる魂が、雄叫びを上げた。
 彼らは互いに気づかない――その叫びの相乗に。同じ叫びが、二つ同時に上がったことに。




Memorial Scene.02 『炎熱の中に沈む悪夢ゴーン・ウィズ・ザ・ブレイズ


  GM   次はマルガリータのシーンです。まずは家族と一緒にいるところを描写して、その後、死んでもらおうと思うけど……
  マルガリータ   夫は適当な神殿騎士にしておこう。そうすればヒエムスとつながりができるはずだ。名前はジョン、息子はジョナサン。
  GM   では、君が仕事を終えて家に帰ってくると――
  マルガリータ   あー、今日も疲れたわー、と言って、帰ってくるなりソファに倒れ込む。
  GM  『お疲れのようだね』と言って、ジョンが食卓に食事を並べていく。
『最近は椅子に座って食べるのが主流だけど、今日は昔ながらに、寝そべりながら食べる方がいいかな?』
  ヒエムス    『父ちゃん、これ咀嚼そしゃくしにくいよ!』(笑)
  マルガリータ   わかったわかった、ちゃんと座って食べるから(笑)。
  GM   そんな感じで食事がスタート。
『そういえば最近、ヒエムスという見どころのある神殿騎士が入ってきてね』
  マルガリータ   それなら、マルシアからも話を聞いたね。
  GM  『ああ、ムーナティウスさんが推薦していたね』
  マルガリータ   あなたとマルシアが薦めるんだから、相当な子なんでしょうねぇ。
  ヒエムス   やばい、プレッシャーが(笑)。
  GM  『ああ、最近見ない、謙虚で生真面目な青年だよ。ジョナサン、おまえもそうならなきゃいけないよ』
  ラスフェーン  『大丈夫だよ父ちゃん。僕はもうじゅうぶんに謙虚さ!』
  GM  『(オーバーリアクションで肩をすくめて)そういうところが心配なんだ』
  ヒエムス  『どっ、わはははははは……』
  マルガリータ   アメリカンホームコメディか!(笑)
  GM   そんなことを言っていると玄関でノックの音がして、ジョンが出ていく。
『どなたですか――』
 次の瞬間、吹き飛ばされたジョンの体が、玄関から居間を突き抜けて壁に激突。ずる、と壁からずり落ちる。
『と、父ちゃんッ!?』
  マルガリータ   ジョナサンは下がってなさいッ! ナイフとフォークを持って立ちふさがるッ!
  GM  『がしゃっ、がしゃっ……』という金属音。戸口から入ってきたのは、全身を赤い鎧兜で覆った何者か。まびさしに隠され、目元は見えない。
  マルガリータ   あー、これはナイフじゃ勝てないわ。……どちら様かしら?
  GM   そう言った次の瞬間には、赤い鎧が腕をバッと振るっている。呼応して、突如、黒い炎の嵐が出現し、ジョナサンを撃ちすえた。
 燃え立つ黒い炎の中で、小さな体が崩れ落ちていく。
  マルガリータ   ジョナサン! こ、このッ! ナイフで撃ちかかりますが――
  GM   飛びかかった君の腹部が何かに貫かれた。視線を落とす間もなく頭をつかまれ――
『そろそろ舞台から降りてもらおうか――』
 くぐもった男の声が響く。
  マルガリータ   あっちゃあ――衰えたもんだ。家族ひとつ護れないなんてね……。
  ヒエムス  『ダメだ母ちゃん……憎しみに任せては、そいつには勝てないッ……!』
  マルガリータ   誰だおまえは!(笑)
  GM  『おまえは死ぬ。だが、その魂の輝きは捨てるに惜しい』
 赤い鎧が言うと、君の身体の奥から何かが引き抜かれるような違和感が生じる。
 生命の灯、イグニス・ウィタリス――それが奪い取られていく。
 これは誰でも持っているものなんだけど、君はそれが一際強かったようだ。大量のイグニス・ウィタリスが引き抜かれていく。
 同時に腹部から凶器が引き抜かれ、君はどしゃりと倒れる。
  マルガリータ   では、倒れた瞬間、ジョナサンの死体が見えて。ごめんね、とつぶやいて死んでいきます。
  GM   了解。では、そこでシーンを切りましょう。



 護るべき民の中に、愛すべき者を見た。
 夫――息子――かけがえのない家族。その存在は、暗黒の駆け引きを強いられる身にとって、何よりの光であった。
 だが、思い出深い家の中を舐め尽くす炎は、無情にして非情だった。
 揺らぐ熱炎の奥に崩れ去る光を、彼女はその目に焼きつける。
 瞳をあぶる熱火は、その奥に、決して消えない闇の炎を灯していく――。




Memorial Scene.03 『魔気 紅クリムゾン・フォース


  GM   最後はヒエムスです。
  マルガリータ   いやー、わくわくしちゃうなぁ。まさかレッドアイとかいう謎の怪人に負けたりなんてしないんだろうなぁ。
  ヒエムス   無茶ぶりを……(笑)。
  GM   シーンは深夜の街中。アンデッド出現の報せを受けて神殿騎士や神殿兵が急行している。
『おのれアンデッドども! しょうこりもなく湧いて出よってッ!』
 戦斧を構えた壮年の騎士隊長、ゴメスが次々にゾンビーを破砕していく。
  ヒエムス   ゴメスさんの近くで、大楯スクトゥムで突進します。
  GM  『よい働きをするな坊主ゥ! この調子で残るアンデッドどもを狩り尽くしてくれんッ!』
  ヒエムス   は、はい!
  GM   とか言ってると、離れたあたりで『ずがぁっ!』という響きがあり、ゾンビーたちが旋風状に吹き飛ばされていく。
  ヒエムス   な、なんだ?
  GM  『ほう。貴様はまだ、奴を見たことはなかったか。――見よッ!』
 ゴメスが指し示す先には、爛々と輝く一対の赤い瞳。
『燃える炎の瞳はダンピールの証……穢れたる不浄の魂よ!』
 がしゃり、という音がして、踏み出してきた脚は赤い鉄甲に覆われている。
 全身を赤い甲冑で固め、兜のまびさしの隙間から、燃える炎の瞳を輝かせる魔人の姿がそこにある。
  ヒエムス   な、なんだ……あいつは!?
  GM   魔人は、無造作に腕を振る。すると、近くにいたゾンビーの頭部がパァンッ! と破砕される。
  ヒエムス   え? でも、アンデッドを倒している……隊長、僕たちはどうすれば?
  GM   ゴメスは無言で突進し、不意に魔人へ戦斧を叩きつけた。魔人は堅固なガントレットでその一撃を受け止める。
  ヒエムス   た、隊長ッ!?
  GM  『ヒエムス副隊長ォッ! ダンピールとは何だッ!』
  ヒエムス   は、はいっ! 不浄の血が混じった、穢れた人間のなれの果てですッ!
  GM  『我々神殿騎士のすべきことは何だッ!』
  ヒエムス   この隊長、無茶を言う……!
 う、うおおおおーっ! スクトゥムでチャージします。
  GM   君の突撃を受けて、さすがに魔人がよろけた。そこを狙ってゴメスが戦斧を繰り出すも、魔人はバックステップで剛剣を回避。そのまま夜の闇に消えていく。
  ヒエムス   退い……た?
  GM  『逃したか……魔人レッドアイ。あの魔人を相手に退かぬとは見上げた根性だ。褒めてやるッ!』
  ヒエムス   は、はい。ありがとうございます。
  GM  『では、残りのアンデッドを殲滅するぞッ!』
 ……と、いうことがあった翌日に、場面が転換します。君はマルシアに呼ばれて屋敷にお邪魔している。
  ヒエムス   おや、そっち。
  GM  『で、どうだった』客間に君を呼びつけて、優雅に茶をすするマルシア。
  ヒエムス   いえ、ゴメス隊長に助けていただいてばかりで。特に昨日は、魔人レッドアイという奇妙なダンピールみたいなのが現れて……てんてこまいでしたよ。
  GM  『なるほど。だがおまえのことだ、うまくやっているのだろう』
  ヒエムス   どうにか。あなたには感謝しています。僕を神殿騎士に推挙してくれて。
  GM  『よい』と手を振る。『おまえを神殿騎士に推挙したおかげで、神殿への私の圧力も増した』
  ヒエムス   この人にはかなわないな、と苦笑。
  GM   マルシアの傍らで、娘のエレクトラが首をかしげる。『魔人レッドアイ……ですか?』
  ヒエムス   ああ。赤い鎧を身にまとった、恐るべき敵だったよ。でも、次はきっと、どうにかするさ。
  GM   静かにうなずく。『ラスフェーンだったら、どうなのかしら』
  ラスフェーン   ゴメスのおっちゃんでダメだったんなら、あたしもキツいかもねえ。
  GM  『だが、双剣であればそうでもあるまい』
 にやりとするマルシア。
  ラスフェーン   ま、確かに。あたしたち二人でかかれば、どうにかなるかもねえ。
  ヒエムス   この二人、頼もしいなぁ。
  GM  『面白い話が聞けた。これからも精進するがいい』にやりとするマルシア、
『がんばってくださいね』にこりとするエレクトラ。
  ヒエムス   ありがとうございます。……あ、茶菓子いただいてもよろしいですか?(笑)
  GM  『よい、存分に食え』
  ヒエムス   ありがとうござます。もー、甘いものなんて一週間ぶりで。がつがつがつがつ。
  GM  『ヒエムスさんたら、子供みたい』穏やかに笑うエレクトラ。
  ラスフェーン   あたしもがつがつしたいなー、という視線でじーっと茶菓子を見てる(笑)。
  GM   では、マルシアが『ほれっ』と茶菓子を投げる(笑)。
  ラスフェーン   わーい。ぱしっ、もしゃもしゃ。
  GM   アルドにも『ほいっ』と投げると、アルドは受け取ったはいいものの、困ったような表情をしている。
  ラスフェーン   受け取りはするのか(笑)。
  ヒエムス   なんて訓練された犬どもだ(笑)。
  GM   そんなところで、このシーンを切ります。



 清浄を旨とするこの都市で、不浄の存在は決して許されることがない。
 人々に害なす邪悪――討ち砕くべき障害――それ以外の何物でもない。
 そうと知りながら、胸に刻みながらも、青年の心に生じたしこりは、淡い違和感を放ち続けている。
 赤き魔性の鎧――その存在が、どうしても消えてくれなかった。



  GM   では、次はいよいよ、シナリオ本編への導入と行こう。
  一同   はーい。



 次回へ続く