Necromantica


“オースブレイカー”



Preplay.


  GM   ではネクロマンティカのセッションを始めます!
  一同   はーい!



 数人が同じテーブルに着き、紙や筆記具やトランプや飲み物を広げているという、この光景。
 実は、これからゲームを始めるところなのです。

 その名は、『テーブルトーク・ロールプレイング・ゲーム』。  遊び方が書かれたルールブックを元に、「ゲームマスター(GM)」が作ったシナリオを、「プレイヤー」が作った「プレイヤー・キャラクター(PC)」で遊ぶ――
 という、たいへん変わったゲームです。

 そしてこれは、「リプレイ」と呼ばれる新感覚文芸媒体。
 テーブルトークRPGのプレイ風景を録音し、さらに編集して作成された読み物です。

 テーブルトークRPGの遊び方は、実際に遊んで見ないとなかなかよくわからないものですが、リプレイは、このゲームの雰囲気を、おおよそ察する手助けとなるのです。


 ちなみに、今回ここで遊んでいる『ネクロマンティカ』というゲームは、一部の有志が勝手に盛り上がって作っちゃったオリジナルであり、一切販売されていないものなので、ご注意ください。



  GM   この『ネクロマンティカ』というのは、ゾンビーやスケルトンなどのアンデッドになって遊ぶゲームです。
 えー、まず、シオルさんという神がおりまして。
 この人が、世界やら大地やら海やらを作りました。
  プレイヤーA   あの、BGMがほのぼの3分クッキングみたいな感じなんですが、いいんですか(笑)。
  プレイヤーB   なんか箱庭ゲームになってますよ(笑)。『人間を配置してください』みたいな(笑)。
  GM   まあ、そんなもんだし(笑)。
 さて、こうしてシオルは、世界を創った。
 だが、人々が死んだ後、その魂が還る場所を設定していなかった。
 しょうがないので、シオルは、自分が冥府になることでなんとかしました。
 死者の魂はシオルに抱かれ、“インフェルノ”と呼ばれる黒い炎で焼き清められて、記憶を失い、再び輪廻転生する――というのが、この世界の一般的な神話であり、事実、その通りです。
 一同   はい。
  GM   しかし。強い未練を現世に抱く者は、インフェルノに身を焼かれながらも、これを引きちぎり、強引に現世に戻ってしまう。
 すると――神の力であるインフェルノは、人間を動かす生命の炎“イグニス・ウィタリス”とほぼ同質の存在なので、死んでいるのに、生きているかのように活動することができるわけです。これが『アンデッド』。
 ただ、インフェルノに焼かれた影響で、ある程度、記憶を失っていたりするし、インフェルノを使い続けることで、どんどん記憶を失って行ってしまう。そんななか、現世に戻ってきて未練を果たせば、昇華できますが、それができなければ、やがては自我や理性すらも失い、グールと成り果てるわけです。
 そんな世界で、君たちには、アンデッドや、それに関わらざるをえなくなった人間をやってもらいます。
 では、まず今回のシナリオの予告をやります。



香油都市ミルミア――
香油産業が盛んなその都市で、今、死の乱舞が始まる。

不遇の死を迎える者たちと、その事件を追う者たちと――
交差の果てに、闇なる誓いが明らかとなる。

“オースブレイカー”

失える記憶の果てに、どんな願いがあったのか。



  GM   では、続いて、ハンドアウト行きまーす。



PC1用ハンドアウト 【殺された花屋】

因縁記憶:【好意】 対象:【シエラ】

タイプ:アンデッド限定

死の記憶
 あなたは、街の花屋だった。
 『シエラ』という若い女性が手伝ってくれるおかげで、上々の日々だった。
 だが、ある少年が、花を盗んだのを追いかけた際に、あなたは、少年が路地裏で殺される現場に立ち会う。
 そして、そこであなたもまた、殺されてしまうのだった。

現在
 ふと気がつけば、あなたはアンデッドとしてよみがえっていた。
 どうしてかはわからない。だが、はっきりしている事実はひとつ――このまま手をこまねいていれば、シエラも同じ目に遭うかもしれない。
 それを止めるには、自分を殺した殺人犯の暴挙を止めるしかない……!

未練:自分を殺した相手を見つける



  GM   という感じで、『ネクロマンティカ』のハンドアウトは、死んだときの状況である『死の記憶』、シナリオへの導入となる『現在』、それからキャラクターの当面の目的である『未練』が記載されています。
 この設定に沿っていてくれれば、どんなキャラを創ってもいいです。
 では、続いてPC2。



PC2用ハンドアウト 【殺されたストリートチルドレン】

因縁記憶:【友情】 対象:【レックス】

タイプ:アンデッド限定

死の記憶
 あなたは、街のスラムで育ったストリートチルドレンだ。
 『レックス』という同世代の少年とともに、日々を食いつないでいた。
 あるとき、レックスが、『面白い場所を見つけた』と言うので、ふたりで行ってみることにした。
 だが、そこに足を踏み入れたあなたとレックスは、命を落とすことになる――。

現在
 あなたは、アンデッドとして復活を遂げ、街を歩いている。
 レックスはどうなったのだろうか――わけもわからぬまま、あなたは彼を探し、うろつき始める。

未練:レックスを見つける



  GM   で、最後にPC3です。



PC3用ハンドアウト

因縁記憶:【(任意)】 対象:【ダグラス】

タイプ:ポゼッスド、もしくはクルスニク

現在
 あなたは、神殿騎士として、日夜、アンデッド退治に精を出している。
 最近は、特にアンデッドの発生が多く、手を焼いている。
 それでもなんとか退治できているのは、神殿兵である、ダンピールの『ダグラス』の手腕に依るところが大きかった。

未練:アンデッドを駆逐する



  GM   では、ハンドアウトが出そろったところで、好きなのを選んでください。



 ハンドアウトを選択し、さらにアンデッドとしてのタイプを選んでいくプレイヤー一同。
 その後は、ルールに従って、着々とキャラクターのデータを作りつつ、設定を深めていきます。



  GM   では、キャラクター紹介をしてもらおう。
  プレイヤーA   名前は『フロスガル』
 街の花屋を営んでいる、18歳の男です。今はまだ人間の気分でいます(笑)。
 子供のころから、きれいなものを見たりいじったりするのが好きで、それが高じて花屋になりました。
 しかし、どうにも商才がなく――そんなところに助手のシエラが来襲ッ!
  GM   来襲ッ!?(笑)
  フロスガル   マネジメントは、彼女に任せております。
 なお、死後は幽霊ゴーストになる予定です(笑)。
 インフェルノ技法で直接攻撃をするタイプですね。
  GM   了解でーす。では、次の人。
  プレイヤーB   はい、『テュネス』、11歳、女性です。
 街のスラムで育ったストリートチルドレンで、レックスという少年とともに食いつないでいて、性格的には、すごく押しの弱い感じなんですが――何かと小器用です。こっそりいろいろ盗んだりできます。
  プレイヤーC  『お、俺の心臓がねえッ!?』
  GM   強すぎだろ。
  テュネス   レックスが活発系だと思うので、その後をついていくような、オプション系女子。
 見た目は、幸薄そうな感じの、前髪をバケツかぶって切ったようなイメージです(笑)。
 死んだ後のタイプは吸血鬼ヴァンパイアで、〔体力〕が異様に上がっちゃった♪ てへ♪
  GM   オドオドしながら、少年ジャンプを引きちぎれるという(笑)。
 では、最後。
  プレイヤーC   はい、『プレイア』と申します。
 代々、神殿騎士の家系に生まれてまして、実は先祖に、結構偉大な方がいらっしゃいまして。
 その方が、アンデッド退治にすごい功績を上げたんですけど、倒し切れなかったことに未練を抱いたようで、ゴーストになってしまいまして。
 代々、『がんばれ! がんばれ!』と一族の者に憑依して、戦場に駆り出すようになりました。
  GM  『あのすいません、おじいさま、そろそろ成仏してくれませんかね?』
  プレイア  『いや、ワシはアンデッドすべてを駆逐するまで死んでも死にきれん!』
『いや、あなたもアンデッドですよ!』
 みたいな(笑)。そのおじいさまに憑依されているので、タイプは被憑依者ポゼッスドです。
 そんなことをしてたら男手がいなくなってしまいまして、普通に娘として生まれて、あまり戦場に出た経験もないのに、神殿騎士として働くことになってしまいまして……どうしよう、みたいな……。
  GM   『どうしよう』じゃねえよ!(笑)
  プレイア   なので、戦闘技法はそんなにないです。ただ、おじいさんスゴい過保護なので、フルプレート着て防御に特化してます。
 年齢は、20歳に行くか行かないかくらいで考えてます。
  GM   了解。では、このメンツでセッションを始めましょう。



Memorial Scene.01 『徒花の散りゆくようにブロウクン・ブラッサム


  GM   最初は、フロスガルから。街で花を売っているシーンです。
  フロスガル   鼻歌なんぞ歌いながら、花にじょうろで水をやっています。
  GM   外では、シエラが、
『はいはーい、今、お安いですよー』
 とかやっている。
『安いですよー! 安いんですったら! や・す・い・ん・で・すうー!』
  フロスガル   いや、そんな安い安い連呼されたら、ちょっと悲しいっていうか……(笑)。
  GM  『あ、すいません。でも、そんなこと言ってるから、売れないんですよ』
  フロスガル   だよねー、ごめんねー(笑)。はい、すいませんでした。
  GM  『ちゃんと管理しないといけませんからねっ。私が来たからには、ビシバシ売りますよ!』
  フロスガル   頼りにしてるよ。
  GM  『そういえばそろそろ、あの子たちのところに行った方がいいかもしれないですね』
  フロスガル   あの子たち、というと?
  GM  『あのストリートチルドレンたちですよ』
 シエラが率先してやってるんだけど、スラムにいる彼らに、パンとかを持っていくことがあるんだ。君は[手品]技能を持っているから、きっと手品も見せてあげたりしてるんだろう。
  フロスガル   なるほど。
 ああ、そうだね。じゃあ、用意したバスケットにパンやら小道具やらを詰め込んで――
 じゃあ、行ってくるけど、お店の方、お願いね。
  GM  『あ、私も行きますよ』
  フロスガル   あ、そう?
  GM   とか言ってると、いきなり君の視界の端で、『バッ!』と、花を盗んだ少年が駆け出していく。
  フロスガル   あっ、こら! ごめん、シエラ! ちょっと追いかける!
  GM  『あ、はい』
 では君は、その子を追いかけて路地裏に駆け込んだ。
  フロスガル   (ぶつぶつと)まったく、花一本とはいえ、それを育てる労力を考えたら万引きは許しちゃいけないって、シエラから言われてるんだ――
  GM  『ぐしゃあー!』
  フロスガル   うえっ!?
  GM   路地裏に入り込んだ次の瞬間、花を盗んだ少年の頭蓋が、そんな音とともに、砕かれているのを、目の当たりにする!
  フロスガル   ……ん? み、道を間違えたかな?(笑)
  GM   そこには、黒いローブをまとった男がひとり――少年の頭蓋を、右手で粉砕し、ぶら下げている。
 そして、ちらりと、君に視線をやる――鋭く突き刺すような視線を。
  フロスガル   (茫然と)こ、子供の頭って、リンゴより、握り潰すの難しいって思ってたんだけど……、気のせいだったかなあ……?
  GM  『見られたか』
  フロスガル   み、見なかったことに、したい、です――
  GM  『人の記憶はアテにならない――消しておこう』
  フロスガル   じりっ、じりっ、と後ずさるんですが――、【根源記憶】が【正義】に対する【憧憬】なので、『どうする? どうする?』と、頭の中で考えて――でも腰が退けている。
  GM   すると――相手が、すっと左手をかざすと、一瞬にして、君の身体を黒い火柱が包み込む!
  フロスガル   いいっ……!?
  GM   その悲鳴すら、炎に焼き尽くされていく。
『骨も残さん――』
  フロスガル   う……ああっ……!?
  GM   そんな君を置いて、男は去り――後には、灰となった君が、ざあっと風に散る。
  フロスガル   ああ――シエラ――いっしょに行けなくて、ごめん――なあ――
  GM   ――そんな君の意識が、不意に覚醒する。
  フロスガル   はっ!
  GM   路地裏――少年の死体はない。
  フロスガル   あ、あれ……? 無事、だったのか……?
 そうだよな、人を素手で握り潰せる人なんて、いるはずないもんな――
 すっと胸を撫で下ろします。
  GM   すると、胸にはその感触がない――手にも。
  フロスガル   ん?
  GM   透けとるー。
  プレイア   スケトルン(笑)。
  テュネス   新たなアンデッドだ(笑)。
  GM   で、そこに、路地裏に男が入ってくる。
『ああ〜、トイレまで保たねえや〜』(一同爆笑)
 そして君をすり抜けていく。
  フロスガル   え、え、ええええええ!?
 し、死ん……だの? 僕は? どう……するんだ? これから……。
 空を見上げる。酔っ払いが歩いてるってことは、時間は夜?
  GM   そうだね。
  フロスガル   目撃者は、消さなければならないって言ってた――あの様子から察するに、それだけじゃなくて、この後にも何かするから、知られたくなかったのかな……。
 だとすると、今度もまた誰かが殺されるのか――?
 ……。一回死んだんだったら、二度は死なないだろう。どうにかしなくちゃ……!
 ああ、でも、とりあえずはシエラに――この身体で会うのか? どうしよう?
  GM   シオルを崇めるこの世界の宗教では、アンデッドは不浄であり、存在すべからざるものとされている。シエラは、極めて敬虔というわけじゃないが、一般的なレベルでシオルを信仰している。
  フロスガル   ってことは、いい顔はされない――よなあ。
 とりあえず、ここにいてもしょうがない。まずはシエラの様子を見に行こう。姿を見せるかどうかは、その場の流れで……!
 この世界って、ゴーストは一般人に見えないんでしたっけ?
  GM   ああ、一般人に対して不可視化することができる。逆に姿を現すこともできるよ。
  フロスガル   じゃあ、とりあえず、不可視の状態で店に行こう……!



 あっさりと――あっけなく――いともたやすく簡単に――彼の命は、虚空に散った。
 終わってしまった現在――吹き散らされた過去――失われきった未来――
 彼という存在の物語は、永遠に過去のものになってしまった。
 だが、それでも棄てきれないものがある――諦めきれないものがある。
 花のような美しさには程遠い、不浄の未練と罵られても、やらねばならないことがある。
 手折られてなお、倒れるわけにはいかないと――風となった青年は、使命を抱いて夜を往く。




Memorial Scene.02 『死地並べデッド・エンド・エンカウンター


  GM   続いてテュネスのシーン。
 普段、ストリートチルドレンとして、生計を立てている君たちだが――
  テュネス   カサッカサのパンとか、むっちゃモサモサしてます。
  GM   そんなところに、少年レックスが、ひょいっとやってくる。
『テュネス! テュネス! こっちこっち!』
  テュネス   レックス? どうしたの? とてててて。
  GM  『面白い場所を見つけたんだ!』
  テュネス   ? 何かあったの?
  GM  『ああ。面白いものがな』
 にやっ。
  テュネス   それは――持ってこれるようなものじゃないの?
  GM  『ああ。だからさ、行こうぜ!』
  テュネス   う、うん――いいよ。
  GM  『よし、決まりだ! 今日の夜くらいには、いつものおねーさんとおにーさんが来るだろうから、それまでに帰っときゃいいや!』
  テュネス   う、うん。そうだね。
  フロスガル   ドヤァ(笑)。
  GM  『んじゃ、行こうぜ!』
 レックスは、先頭切って歩き出す。
  テュネス   とてててて、と後をついていきます。歩幅が合わないので、時折走る系のアレで。
  GM   レックスは、時たま立ち止まって、後ろを振り返ったりしてる。
 で、行ってみるとですね。
 スラム街のなかにある廃屋に着く。
『ここさ! 昨日来たとき、ここに面白い紋様が描かれてたんだ!』
  テュネス   もん、よう?
  GM  『そうさ! とにかく、見てみろよ! 後で、ここを第二の秘密基地にするのもいいな!』
 中に入って行くとですね、確かに、紋様が描かれている。
 壁や床一面に、赤黒い、不可解な、幾何学的な紋様が刻まれている。塗りたくられている。
 そして、それだけではなく、ローブをまとった人影が、いくつもの死体を等間隔に並べている――
 という現場に出くわしました。
  テュネス   あ……ああ……!
 レックスに、『逃げましょう』的なモーションを――
  GM   すると、彼も予想外だったようで、
『う、うわあっ!』がんがらがらっ!
 と音を立ててしまう。
 すると、男はゆっくりとそちらを見る――突き刺すような瞳で。
  テュネス   あ……ああ……。
  GM  『迷い込んできたか――ここを知られるわけにはいかん』
 近づいてくる。
『おまえたちにも、この儀式の一部になってもらおう――死ぬがよい』
  テュネス   レックスを引っ張って、後ろに下がろうとする――
  GM   男は、すっと大剣を手にして――まず、レックスの身体を『どすぅっ!』と貫く!
『が、はあっ……!』
 そして、振り捨てるようにして、少年を壁に叩きつけながら――刃を抜く。
  テュネス   レッ……クスッ……!
  GM   と言った次の瞬間には、今度は袈裟懸けに君を斬り下ろす!
  テュネス   うっ……ううっ……!
  GM   そして、剣を収めると、
『ふむ……、ひとつ、余分だな』
 君の身体をつかみ、去っていく。おそらく、どこかに放り捨てるつもりだろう。
 君の意識は、そこで途切れる――。
 そして、次に目覚めたとき、君は、どことも知れない路地裏に放り出されている。
  テュネス   ……はっ! 起き上がって、ばばばばば、と身体を確かめます。
  GM   服がざっくり切り裂かれているが、肉体に外傷はない。ただ、口元に、長い牙が生えていますね。
  テュネス   な、なんじゃこりゃあ、みたいな、わなわなとしたモーションをしてから――
 はっ、とレックスのことを思い出して。
  GM   そんな風に君が困っていると、ス、と、トーガをまとった男が近づいてくる。
  テュネス   トーガって……。
  GM   筒頭衣であるチュニックの上に、斜めがけに着る、古代ローマの衣装だね。
 この世界においても、古い、民族衣装のような意味合いを持つ。
『ほう――? 死霊が、こんなところをうろついているか』
  テュネス   しりょ、う……?
  GM  『その牙が、何よりの証――おまえは、ヴァンパイアとして、再びこの世に舞い戻ってきた死者だ』
  テュネス   死んじゃった……の……?
  GM  『ああ――』
 と言って、じろじろと君を見つめる。
死霊秘術ネクロマンシーだな。だが、ずいぶんと粗い。これでは、殺したばかりの人間しか、アンデッド化させることはできまい』
 そこで、つと、空を見上げて。
『だが、おかげで、街に冥気が集まっている――死者をよみがえらせるには、良い空気だ。何事か知らぬが――失笑を禁じえぬ』
  テュネス   あなた――誰――?
  GM  『我が名はラケルトゥス。死を忘却せし者――』
  テュネス   よくわからないというカオをする。
  GM  『いずれ冥気が広がり、街に大きな災いをもたらすことだろう。そうなる前に、とっとと地獄に戻った方がいい――』
 言って、その場を去っていく。
  テュネス   茫然と見送りながら――レックスのことを思い出して、ふらふらと移動し始めます。



 生きることは、難しいことだった。死なないことは、困難な命題だった。
 だけど、それでも、彼がいたから、日々を生きていくことができた――その気になれた。
 今、自分は命を失っている。
 死者となり、牙を生やし、人ならぬ力をその身にまとっている。
 何がなんだかわからない。どうすればいいのかわからない。
 だが、少なくとも、何もしないわけにはいかないのだ――生きるための努力もせず、何もしなでいることは、死んでいるのと同じなのだ。
 彼が、それを教えてくれた。
 少女は奔る――夜を。街を。
 大切なものを、見つけ出すべく。




Memorial Scene.03 『死気濛々ダークサイド・リメイニング


  GM   最後はプレイア。夜――君は、部下であるダンピールのダグラスとともに、アンデッド狩りに向かっています。
  プレイア   いやー、最近、多いですよねえ。
  GM  『まったくッスねえ!』
 青年――ダグラスが相槌を打つ。
『まあ、でも、オレと姉御がいりゃあ、なんとかなりまっせ!』
  プレイア   あ、姉御って言われましても――
  GM  『いや、だって。姉御の方が年上でしょ?』
  プレイア   まあ、そうですけども――私なんて、ホントなんか、あまり頼りにもならなくて――
  GM  『いやいやいやいや。なーに言ってんスかー。姉御の〈シールド・プロテクト〉がなきゃ、オレなんか今頃死んでますよ。
 んで、オレが死んじまうと、ヴァンパイアになっちまうでしょ? ヤバイっスよ』
  プレイア   ヤバいねー。倒す対象、1人増えちゃうねー(笑)。
  GM  『あ、大丈夫ッス。オレが死んだら、その身体をインフェルノで焼いて灰にしてくれたら、よみがえらないんで。いざって時は、それでお願いしやす!』
  プレイア   あー、なるほど〜。
  GM   彼のようなダンピールは、ヴァンパイアなどの血肉を持ったアンデッドと人間との間に生まれるので、生来インフェルノを使える代わりに、そういう特性を持っているんですねー。
『ま、そうカンタンには死なないのが、オレですけどね!』
  プレイア   まあ、こっちも、そう簡単には死なせはしないけども〜。
  GM  『じゃ、行きましょうか、姉御っ!』
  プレイア   すごい死にそう、こいつ。(一同笑)
  GM   さて、夜の街を行くとですね、閑散とした大通りに、ゾンビーの群れが出現している。
  プレイア   はあ〜、また〜。なんでこんなに、アンデッドが湧いているのかしら。
  GM  『まったくッスね。行きますぜ、姉御っ! うおおおおおおー!』
 大剣マグヌム・フェルムで斬りかかっていく。
  プレイア   がんばってー。こちらもフル装備の鎧と楯を持って、追いかけていく。
  GM   では、君に憑依しているおじーちゃんが、
『今じゃ! そこじゃ! 右ッ! 左ッ!』
  プレイア   どっち!? おじいちゃん!?
  GM  『好きな方を選べ!!』
  プレイア   どっちでもいいんじゃないですかー!!(一同笑)
  GM   ダグラスは、近くのゾンビーを切り倒しながら、
『おっ、じーさん、今宵も元気ッスねえ!』
  プレイア   おじいちゃん、いつも元気すぎて困るんです!!
  GM  『わしが元気であることは何よりの務め!』
 そんなことを言いながら、ゾンビーを倒しまくる。
『ふー。これで、ここいらはなんとかなりましたねっ!』
  プレイア   は〜、とはいえ、倒しても倒しても、キリがない。何か、元になってるものでもあるのかしら?
  GM  『こいつらがしゃべってくれたら、話早ぇんですけどねー。アンデッドってなァ、記憶がなくなってていけねえ』
  テュネス  『うーあー』(笑)
  プレイア   どっかに、記憶を残してるアンデッドがいないかしら。
  GM  『ま、気長に行きましょうや』
  プレイア   でも、気長に行って、犠牲が増えてもしょうがないからね。ちょっとくらい急いで行きましょう。
  GM  『そっすね。んじゃ、行きますか!』



 眠れる死者が起き上がり、罪なき生者をむさぼり喰らう。
 そんな悪夢を見ぬふりしえるはずもなく、彼女は今日も、剣を抜く。
 死者と生者の合いの子を従え、死せる死人殺しを背後に控え、修羅すら打破する騎士となる。
 散りゆく炎の灰が待つとも、尽きせぬ決意が血路を開く――。



  GM   では、続いて、シナリオ本編への導入と行こう。
  一同   はーい。



 次回へ続く