VOID ORPHANS
ヴォイド・オーファンズ



“郷愁の尋人クエスト





Preplay.


  GM   じゃあ、『ヴォイド・オーファンズ』のセッションを始めます!
  一同   はーい。



 数人が同じテーブルに着き、紙や筆記具やトランプや飲み物を広げているという、この光景。
 実は、これからゲームを始めるところなのです。

 その名は、『テーブルトーク・ロールプレイング・ゲーム』。  遊び方が書かれたルールブックを元に、「ゲームマスター(GM)」が作ったシナリオを、「プレイヤー」が作った「プレイヤー・キャラクター(PC)」で遊ぶ――
 という、たいへん変わったゲームです。

 そしてこれは、「リプレイ」と呼ばれる新感覚文芸媒体。
 テーブルトークRPGのプレイ風景を録音し、さらに編集して作成された読み物です。

 テーブルトークRPGの遊び方は、実際に遊んで見ないとなかなかよくわからないものですが、リプレイは、このゲームの雰囲気を、おおよそ察する手助けとなるのです。


 ちなみに、今回ここで遊んでいる『ヴォイド・オーファンズ』というゲームは、一部の有志が勝手に盛り上がって作っちゃったオリジナルであり、一切販売されていないものなので、ご注意ください。





  GM   さて、例によって、これは自作システムなんで……まず、説明から行きましょうか。
 まず、大いなる――母なる《大海》がありました。
 そこに、ぽこぽこと《大陸》が産み出され、その上に、いろんな種族がぽこぽこと生まれていった。
 特に繁栄を極めたのは、神族と呼ばれた連中ですが、こいつらは戦争やらかして滅んでしまいます。
  プレイヤーB   あらまあ。
  GM   神族なき後、人間や妖精といった種族が、各大陸に散っていった。
 で、そこから数千年が経過している。
 今回の舞台となるのは、《双璧大陸》シェラリーナ
  プレイヤーA   しぇらりーな?
  GM   そう。大陸の真上に、もう一個、同じ形の大陸がある。
 この大陸には、《始祖妖精アールヴ》から分かたれた、種々様々な妖精種族が暮らしている。
 最初、彼らは部族ごとに別れて暮らしていたんだけど、戦争が起きてしまって。
 んで、人間に倣ってみようぜってことで、部族の垣根を取っ払って国を作り、数百年が経過したのが現代だ。
 君たちは、そのなかの適当な国の、適当な街の、適当な市民です。
  プレイヤーC   適当だな(笑)。
  GM   この大陸には、滅邪者――イヴィルブレイカーという、いわゆる国の垣根を越えた治安維持職があります。
 この滅邪者に協力して治安維持に努めると、報奨金がもらえたりする。
 今回、君たちのキャラは、普段の生活とは別に、積極的に滅邪者に協力するキャラって感じで、組んでみてください。
  一同   はーい。



 そして、約一時間後。


  GM   では、キャラクターの紹介をしてもらいましょう。
  プレイヤーA   はい。《朱頭妖精》レッドキャップのクラック・クロークです。18歳、男性。偉い人のパシリです。
  GM   滅邪者の組織である《滅邪陽刃》に仕える、戦闘に特化した治安維持者――
 斬裂者ロウフル・リッパーですね。
「あっちに悪い奴がいるぞー!」と聞いたらそいつを斬りに行くという。
  クラック   そうそうそうそう。敵を倒せるんなら暴れていいよ、と言われてるんで、よっしゃ、やってやるぜと思ってます。
 ある滅邪者に恩義があってですね。おまえ、そんな強いのにふらふらしてるくらいならちょっといっしょに来いよ、と言われて、ほいほいついて行った。カンジ。
  GM   戦闘スタイルは?
  クラック   [軽戦技]を覚えてるから、いろんな意味で手が早いよ。
  GM   いろんな意味ってなんだ(笑)。
 その“恩義ある滅邪者”の名前は、ジャック・ジェックと覚えておいてくれ。
 では、次の人。
  プレイヤーB   はい。フェイベル・ファブル。16歳、女性。種族は《小妖精》フェアリーで、クラスは重装戦士。
 【超人妄想】があるので、自分を超人だと思っている(笑)。
 フェアリーのおじいちゃんが、何を思ったのか並みのフェアリーでは持てないようなハルバードを作ってしまったのを、若きフェイベルがうっかり見つけて、『これしかない……!』と。
『重ッ! これ! でも、私なら行ける!』
 『アウトリト』という名前をつけ、布製のファンシーなカバーを先端につけて抱いて寝てる。
  クラック   そうでなきゃ、寝てる間に頭カチ割れるもんね。  
  フェイベル   フェアリーなんで筋力が超低いんですが、でも重装戦士。
  GM   では続いて、ロップ。
  プレイヤーC   はい、ロップ・コップ。《美妖精》ゴブリンの男で、15歳。
 どれだけ寝ても寝たりないタイプで、《より良き眠りの会》に所属してます。
  GM   どんな会だよ!(笑)
  ロップ   基本、器用貧乏で、いろんなことができます。[推理]なんかもあるので、寝てる間に真相がわかります。
  GM   コナン君でもいるのか。
  ロップ   あとは、特殊能力に《魔思》や《魔神》があるので、味方に強化を飛ばしたりできます。
  GM   はい。では最後。
  プレイヤーD   どうも、ライカ・ライラ、21歳、女性です。街にある図書館の資料整理などをしているバイトの子です。
 なにかあったら治安維持を手伝う感じです。
 《魔眼》や《護神》の能力を持っているので、治癒や防護を飛ばすことができます。
  GM   了解。では、今回のセッションを開始します。



Opening.01 『え……、退治……?』


  GM   はい、ではオープニング・シーンから。
 君たちは、知り合いの滅邪者イヴィルブレイカーであるジャック・ジェックから、《滅邪陽刃》の詰所に呼び出されます。
 18歳の青年――ジャックが、
『おーい、みんな、こっちだこっちー!』
  クラック   種族は?
  GM   《魔貌妖精》メドゥーサにしとこう。外見上は、耳が尖ってるだけの普通の妖精だ。
『ちょっと、変な依頼が来ててよー』
  フェイベル   では、私にお任せあれ!
  クラック   まあ、ジェックさんの頼みなら、いいっすけどぉー。
  ライカ   で、変なとは、どのような?
  GM  『まあ、来てくれ』
 待合室兼食堂になっている1階の、奥にある小さな部屋に通される。
  クラック   ふふん、仕事があるんだぜ、という誇らしげな顔をしながら入っていく。
  GM   部屋に入るとですね、長身で禿頭の、がっしりした体躯の男が待っている。
 おそらく、《剛妖精》トロールの出身だろう。
 何やら沈痛な面持ちをしている。
『おお、来てくださいましたか』
  フェイベル   こちらが、ご依頼の方ですか。
  GM  『はい、実は――』
 申し訳なさそうな表情で。
『ゴブリン退治をお願いしたいのです』
  ロップ以外   え?(いっせいにロップを振り返る)
  ロップ   えぇええッ!!?(一同笑) 目が覚める!(笑)
  フェイベル   GMに聞きたいんですが、意外と退治されるもんなんでしょうか、ゴブリンってのは(笑)。
  GM   いや、《美妖精》ゴブリンは、長身痩躯で金髪美形な、普通の妖精種族だ。
 人当たりがよく、さわやかで、【妖美のまどわしファシネイション】という、相手にいい印象を与える能力を持っている。
  フェイベル   ――で、そのゴブリン退治をしてくれと。
 (ロップを見て)――すちゃり。(一同笑)
  ライカ   早い(笑)。
  クラック   そりゃ、なんでまた?
  GM  『ええ……まあ、退治というか、追い払ってほしいというか、どうにかしたいと言うか……。
 私たちの部族の村が、この近くにあるのですが――
 その近くに、ゴブリンの部族の村があったんですね。
 それで、ゴブリンの部族が、いっせいに、わが村の近くの、打ち捨てられた砦に移住しまして。
 そして……我々に……食べ物を……ねだるのです。』(一同爆笑)
  クラック   タチ悪ぃ〜(笑)。
  GM  『我々はッ……! 彼らに対して、断るわけにもいかず……ッ! かといって、武力でどうにかするのもアレですし……!』
  フェイベル   なあ、ジャック殿。今のような話で、我々はそのゴブリンどもをブチのめしてしまっていいのか?(笑)
  GM  『いやいやいやいや。ダメダメダメダメ』
  ライカ   何か原因があるんでしょうか?
  GM  『聞くところによると、ゴブリンの村に、怪しげな魔獣が現れたらしいということで――』
  クラック   でも、そいつをどうにかしたとしても、一度おねだりの味を覚えたゴブリンが、おとなしくしてるとは思えないんだけど。
  GM   犬じゃないんだから。(一同笑)
『彼らも、非常に申し訳なさそうな表情をしているので、たぶん大丈夫だと思います。
 そして、そんな表情をされると、食料を出さないわけにも行かず……』
  ロップ   プロだな(笑)。
  クラック   まあ、大義名分を奪うくらいはできるか。
 困ってるのはわかった。かわいそうなのもわかった。
  フェイベル   ていうかコレ、退治するのゴブリンじゃないですよね。
  GM   ごめん言ってみたかっただけ。(一同笑)
  クラック   ま、ジャックさんの頼みならしょうがねえ。なるべくがんばる。
  GM   君たちには、ある程度の独自捜査権が与えられる。
 なので、すべての責任はジャックが負うことになるね。
  一同   それはよかった!(笑)
  GM  『なので、俺の名前に傷がつかないようにしてくれ』
  フェイベル   わかりましたよジョックさん。
  GM  『さっそく傷をつけるなよ!!』(一同笑)
  クラック   ま、モンスターを倒せばいいってんなら、話は早い。じゃ、行くか。
  一同   おー!



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